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式辞など

平成29年度学位記授与式 学長式辞

学長式辞

本日、ここに学士、修士、博士の学位を取得され、卒業式を迎えられた皆さん、誠におめでとうございます。兵庫県立大学の教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。また、この日に至るまで長い年月にわたって、皆さんの成長を支えてこられたご家族、関係者の皆様に、心から敬意と感謝の意を表します。

本年度は、学士1,244名、修士、専門職学位を含め376名、博士22名、合計1,642名が学位を取得されました。本学がこれまでに送り出した卒業生は皆さんを含めて合計18,823名となりました。前身の旧3県立大学等を含めますと、総計71,899名となります。

本日の学位記授与式には、大変お忙しい中、皆さんをお祝いするために、本学公立大学法人理事長でもある兵庫県知事井戸敏三様、兵庫県議会副議長高橋しんご様をはじめ多数のご来賓にご臨席を賜っております。ご来賓の皆様方には厚く御礼を申し上げます。

ご卒業される皆さんの脳裏には、いま、大学生活の様々なシーンが走馬灯のように去来しているのではないでしょうか? 卒業研究・卒業論文で苦しんだこと、研究の進展方向が見えてきた時の喜び、実験や実習のレポートで苦しんだこと、単位取得で冷や汗をかいたこと、友人と青春を共有したクラブ活動、下宿や学生寮で学友と語り合ったことなど、色々なことを思い出されていることと思います。これらの思い出とその中で得た友人は、これからの皆さんの長い人生において掛け替えのない宝物になります。どうか、大切にしてください。

さて、いま日本は、少子高齢化と人口減少の同時進行、東京一極集中による歪な社会構造、巨額な財政赤字等々成熟社会の負の側面が顕在化してきています。加えて、多くの自然災害が毎年のように追い打ちをかけています。世界に目を向けると、急展開するグローバリーゼーションの中で、一部では分断と対立の先鋭化が進み、その厳しさは増す一方となっています。

他方、科学技術に視点を移すと、ICTを核とした技術革新が急激に進展しており、インダストリー4.0やソサエティー5.0に象徴されるように、産業構造、経済活動、社会システムまで大きく変わろうとしています。20世紀にはロボットが生産現場を自動化し、ベルトコンベアの前に並んでいた作業者の多くが不要となりました。21世紀は、AIがオフィスを自動化し、総務や経理、人事などを担当するホワイトカラーまで不要となるという予測もあります。野村総研などの研究によると、技術的には、10~20年後には日本の労働人口の半分の職業をAIやロボットで置き換えることが可能になると指摘されています。そのため、人にはそのようなAIとの協調や創造性など、AIで代替が効かない能力が求められることになるでしょう。

このように、いま、時代は大きな転換期を迎えております。これまでの延長線上では予測することが難しい、不連続の連続、すなわちイノベーションの連続によって、今まで経験したことのないスピードで社会は変化していこうとしています。この潮流の中で、新しい価値観を生み出し日本の社会を再構築していかなければなりません。また、この技術革新と社会変革が世界の人々の心と生活を豊かにし、分断と対立の負の連鎖を断ち切り、国際的融和に繋がるようにしなければなりません。このような難しい局面を打開するために、社会は、知力・体力に優れ、純粋な心を持ち、柔軟な発想ができる若い人材を強く求めています。本日、兵庫県立大学を卒業する皆さんがその担い手になることを大いに期待しています。本学で身につけた「知」の力で、新しい時代を切り拓き、未来社会を創り上げていって頂くことを心から願っています。

折しも、今年は明治維新150周年を迎えています。当時、皆さん方とほぼ同じ年齢の人たちが、国の在り方や国民の幸福のために尽くしたいという高い志をもって、まさに命を掛けて新しい国造りに奮闘しました。時代背景も直面する問題も目指す方向も、当時とは勿論異なりますが、時代を動かすのは高い志を持つ若者なしではあり得ません。皆さんに期待する所以です。

卒業証書を授与する学長

これにひきかえ、昨今、産学官を含めた様々な分野から聞こえてくるニュースは、耳を塞ぎたくなるようなものばかりです。何故、このようなことが起こっているのでしょうか。それぞれの組織や個人が、本来のミッションを忘れて外形的なことに心を奪われ過ぎているからではないでしょうか。真理を探究して新しい知見を発見するという研究本来の目的から外れて論文を書くことだけを目的とした研究をしたり、法に則って国の目的を実現し国民生活を豊かにしていくという行政本来の役割を忘れて辻褄合わせの「行政のための行政」に陥ったりしていることが要因になっています。産業界で起きていることも含めて、いずれの事案もパブリックマインドの甚だしい欠如を指摘せざるを得ません。

社会から負託を受け、その信頼の下に行っている活動であるということを忘れて、個人の欲望や組織の防衛に拘りすぎ、企業倫理、研究倫理、公務員倫理をどこかに置き忘れてしまっているのです。皆さんは、学習倫理や研究倫理、情報倫理、技術者倫理、科学者倫理などについて、入学直後の基礎ゼミや論文執筆などの機会にしっかり学び考えてきています。本学の教員が共同で編集した「スタディスキル入門」という教科書でも多くのページを割いてその重要性を説いています。本学が力を入れている基本分野の一つです。この意味において、皆さんの心配はしていませんが、いま一度、この機会に学び体得したことをしっかり胸に刻み社会に出て行って下さい。その基盤には、勿論「人」としての倫理観があるということを忘れてはなりません。

これから社会に出ると、いつか皆さんも産業界や医療界、学界などで何らかの組織において、指導力を発揮しなければならない立場に立つことになるでしょう。例えば組織におけるリーダーになれば、先見性と俯瞰力、独創力をもって、日々的確な判断を下さなければなりません。そのためには、卒業後も学習を怠らず、日々進歩する専門分野は勿論、様々な幅広い分野の講演や読書などにも積極的に取り組み、異なる思考方法や異分野の知識に触れると共に、正しい批判力を身に付ける努力を続けることが重要です。自分の仕事や考え方を違う視点から見直し、反省や修正をする契機ともなります。

加えて、リーダーには、異なる意見の人からも信頼される高潔な人格が求められます。常に自らを厳しく戒め、立場を超えて人の意見に十分耳を傾け、他者を理解する広い心を持つことが重要です。課題に真摯に向き合い、公平公正、説明責任の果たせる決断力、これがあってこそ、どのような厳しい決定に対しても組織の人達の理解と信頼を得ることができるのです。

旗を背に話す学長

皆さんは、これからの人生を、自らの手で切り拓いていかなければなりません。と言うよりも自分自身の手で創り上げていくことができます。殆どの方が、次の進路は決まっていると思いますが、その中で、自分の価値観、人生観を大事にした豊な人生設計を描いて下さい。「知」のプロフェッショナルとしてそのプライドを守り、充実した人生を実感できる道を歩まれることを期待しています。そして、皆さんが持つ素晴らしい感性を大事にしながら、多様な人が集まる社会の中で活躍されることを願っています。

卒業生と学生は大学の宝です。卒業される皆さんが、それぞれの道で大成されることを祈っています。また、その活躍が本学の評価を高め、学生の勉学へのモチベーションを向上させます。皆さんの肩には、兵庫県立大学の名誉と未来が掛かっています。

最後になりましたが、兵庫県立大学は、皆さんが必要な時にいつでも、「学びの故郷」として戻ってこられる場となるよう努力を続けます。そのため、同窓会組織と連携しながら卒業生に役立つ情報の収集・発信システムを構築していきたいと考えています。悩みや嬉しい朗報がある時にも是非帰って来て下さい。教職員一同いつも待っています。

本日は、誠におめでとうございます。

 

平成30年3月22日
兵庫県立大学 学長 太田 勲

   
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