理事長からのメッセージ Message from president

~豊かな人間性の上に専門技術を~

井戸理事長

このたび、兵庫県立大学の理事長に就任いたしました。
皆さまと共に、本学の発展に微力をつくしたいと思います。よろしくお願いします。

「多にして一」が人間存在の本質であると思います。今日の世界にあって、「生物多様性」が重視されていますが、われわれ一人ひとりも「ミクロコスモス」と言ってよいほど、実は多様性を内蔵しています。多様性がバラバラしかもたらさないとすれば、その人格は統合失調を来たします。豊かな多様性に恵まれながら一つの主体としての統合性を持つのが人間というものでしょう。大学もまた、そうであると言えないでしょうか。

私事ですが、神戸大学を退官後、防衛大学校長と熊本県立大学理事長をそれぞれ約6年勤めました。双方とも「多」よりも「一」に傾斜した組織だったと思います。防衛大学校は自衛隊の幹部を育成するための特殊な高等教育機関であり、国と国民を守るという鮮明な目的のもと、一般大学にはありえない凝集力が働きます。

また、熊本県立大学は、3学部で構成される一つキャンパスの一学年500名のこじんまりした大学であり、すこぶるまとまりが良い。それに対し、わが兵庫県立大学の多様性は尋常でありません。2004(平成16)年に県立大学に統合された三者、神戸商科大学、姫路工業大学、県立看護大学はそれぞれに独自の伝統を持つ個性的な大学です。

それに加えて、SPring-8やSACLA、ニュースバルの先端的装置を擁する西播磨テクノポリスに立地する理学部、旧制姫路高校のキャンパスを引き継ぐ環境人間学部、さらには、大学院を中心とする諸機関、ポートアイランドにあってスーパーコンピュータ「京」を傍らに置く応用情報科学研究科とシミュレーション学研究科、震災復興の一環として淡路島の丘に建てられた緑環境景観マネジメント研究科、HAT神戸に昨年設立された減災復興政策研究科、日本海側の豊岡にあってコウノトリをもケアする地域資源マネジメント研究科などと、無限の拡がりを誇る兵庫県立大学であります。

以上のキャンパスを、私は昨年度中に歴訪しましたが、「科学技術立県」とも言うべき軸をもっての、県立大学の旺盛にして意欲的な全県的展開に感銘を受けました。この無限の多様性を統合することは可能でありましょうか。 「多にして一」と先に言いましたが、性急に「一」を求めてはならないと思います。「多」を殺して、「一」をもたらそうとする誤りを犯してはならない。統合のための様々な努力は大切にはするが、むしろ多の一つ一つの水準を高め輝かせることこそが、県立大学全体の躍進をもたらすのではないでしょうか。

現代の世界は、主として3つの要因に沿って急展開を続けています。第一には科学技術革命、第二に、政治社会の大衆化・民主化、第三には、国際化・グローバル化です。本学は、概してこの3つの潮流に適合的な特質をもっています。とりわけ第一の先端技術を格別に重視する人材育成を旨として、さらに社会情報科学部の開設に向けて準備しています。第三の側面についても、国際商経学部への再編に伴って、留学生との共生の場を含むグローバルビジネスコースを新たに整えるなど意欲的です。第二の社会分野については、経済、経営学部のみであり、厚味を欠くが、私の専門分野であるので、できるだけカバーしたいと思っています。

今日、激動の世界が日本の存立と安全すら脅かす事態を迎えており、その中で日本がどう生きるのか、正念場に差しかかっています。こうした問題についても、学生諸君には関心を持っていただきたいと思います。だが、世界と社会の環境が何であれ、大事なことはそれに対応できる人間力の形成です。どんな技術やノウハウを身につけようと、人間性の土台が崩れては悲劇しかもたらしません。豊かな人間性こそが、すべての専門知識に優先する課題です。本学の学生諸君が豊かな人間性と広い視野をもって、技術能力を活かす立派な人材に育って頂きたいと思います。

公立大学法人兵庫県立大学理事長 五百旗頭 真

   
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