研究シーズ・産学連携

産学連携・研究推進機構長挨拶

山﨑産学連携・研究推進機構長

大学が社会から求められている役割は、教育活動を通して高度な専門性を身に付けた人材を社会に送り出すとともに、大学に蓄積された優れた研究成果を、産学連携活動等を通して社会に還元することと言えます。本機構は、大学における研究成果を社会に還元するための中心的な役割を果たしています。このような活動は、本学卒業生の就職動向や、本学へ進学を希望する受験生の動向にも大きな影響を与え、大学の社会的な価値を決定づける重要な要因の一つとなっています。

最近の政府の成長戦略によると、大学を「稼ぐ組織」へと改革すべく、企業から大学への投資を、現在の3倍の年間3,500億円へと増やす目標を掲げています。従来の産学連携活動は、大学と企業がそれぞれの研究者任せで、比較的小規模な共同研究が中心でした。しかしながら、今後は、大学と企業との組織間契約を基本として、次世代に向けた技術のイノベーションを実現するため、大規模なプロジェクト型共同研究へと大きく転換が図られています。このような政策転換に対応して、大学自身も大きな改革が求められています。すなわち、「大学自身が主導して、今後の研究企画や戦略を立案できる能力」が求められるとともに、「大型プロジェックを実施するための高い管理・運営能力」が求められています。このような状況に対応して、全国の主な大学では、急ピッチで産学連携部門の管理・運営機能の強化が進められています。本機構でも、今後の研究企画や戦略を立案するとともに、大型プロジェクトの実施に対応するため、一層の管理・運営機能の強化を図っていかなくてはなりません。

一方、大学が主導的に研究企画や戦略を立案するときに、配慮すべき点がいくつかあります。

第一は、企業から大学への投資は、短中期的な産業技術開発が主目的になりがちで、大学教員が利益優先の共同研究に追われがちになります。そのような状態になると、大学の本分である教育と、各研究者の独創的な基礎的研究の発展が損なわれることになってしまいます。例えば、10~20年の歳月をかけて、じっくりと基礎から行う研究は、大学においては価値のある研究であっても、産学連携の共同研究テーマとしては適さないものと思われます。第二は、最近話題となっている、防衛技術にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の問題です。本年度、防衛省が募集した競争的研究資金の総額が100億円にも達し、世間の大きな注目を集めました。

第一の問題を解決する方法として、本学教員がこれまでに蓄積してきた独創的な基礎的研究成果(シーズ技術)を抽出・評価し、これを本機構が組織的に支援して応用研究へと発展させることを検討しています。本学独自のシーズ技術を重点採用することにより、教員の基礎的研究への意欲が高まるものと期待されます。現在、本機構で定期的に開催している「異分野融合若手研究者 Science & Technology クラブ」(STクラブ)を充実させ、教員間の自由な異分野研究交流を活性化させるとともに、各教員の優れた研究成果を抽出・評価し、独自の研究企画や戦略を立案する計画です。本学では、これまでに、①超微細加工技術、②新素材開発技術、③AI等の情報処理技術、④ニュースバルを利用した放射光応用技術が、長年にわたって大量に蓄積されています。これらのシーズ技術を結集して、次世代に向けた技術のイノベーションを目指します。平成28年4月には、国の地方創成加速交付金により、工学研究科に「先端医工学研究センター」を設立し、上記のシーズ技術を結集して医工学分野への本格的な応用研究を開始しています。現在、多くの関連企業にも参加して頂き、実践的な医療情報解析技術、医療用の各種センサーや次世代医療検診システム等の開発研究に取り組んでいます。

第二のデュアルユース技術の問題ですが、科学技術分野の研究には、ほぼ全ての研究が当てはまり、大変に悩ましい問題です。しかしながら、研究企画や戦略を立案するにあたっては、常に、「豊かで明るい未来社会をつくる」という研究目的の原点に立ち戻って、我々が何をなすべきかを考えることが必要です。かつて、米国のケネディー大統領は、彼の就任演説の中で「強者が正義を持って法を守り、弱者は守られ、そして世界の平和が維持される」と宣言し、賛否両論のあった米国のグローバリズムを世界に認めさせました。大学は強者ではありませんが、社会のオピニオンリーダーの一員として重い説明責任があります。賛否両論のあるデュアルユース技術の開発研究ですが、常に原点に立ち戻り、誰もが納得できる産学連携活動にしなければなりません。

企業関係者の皆様には、本学との産学連携活動に積極的に参加することをお願いするとともに、今後とも、ご支援、ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

公立大学法人兵庫県立大学 副学長兼産学連携・研究推進機構長 山﨑 徹

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