□ 環境建築学とは □
■人間の感覚と空間原理を結ぶ・・・人間の科学と都市・建築環境創造
 人間の感覚(五感)と空間の環境要素(音、光、熱・湿気、空気)はとても密接な関係にあります。さらにこの感覚は人の感情(心理)や身体機能(生理)とも密接な関係にあります。
 ”建築環境学”は、この人間の生理・心理と空間要素との関係の『しくみ』を探求し、人が安全・健康・快適に暮らすことができる都市・建築空間を『くふう』してつくりだす学問です。

 一般的な大学の工学部の建築学科では『建築環境工学』に相当する分野ですが、本学環境人間学部の理念を鑑み、
『建築環境学』として『人間』をより強く意識した建築環境創造理論の構築をめざします。


■めざすは『空間のアメニティ』

 「アメニティ」という言葉はすでに耳慣れたものになっていますが、もともとはOECDの報告書である「日本における環境政策」(1977年)を きっかけに使われるようになった言葉です。 その報告書では 『日本は、公害を克服したものの、環境の質(Environmental quality)を高める戦いに勝利していない。』と記されています。この『環境の質』にかかわるものが”アメニティ”だといわれています。
 また、暉峻淑子氏はその著書『豊かさとは何か』(岩波新書)で、”アメニティ”とは、『あるべきところに、あるべきものがあること』だと引用されています。これは禅問答のような言葉ですが、とても含蓄のある言葉に思えます。

 さらに、このアメニティは『生活の質』(QOL:Quality Of Life)に密接に関係するものでもあり、人間の幸福や社会の福祉につながるものだとされています。
 このように”アメニティ”には、現在私たちが使っている言葉よりはずっと深い意味があるようです。


 以上のようなことは、都市・建築空間を創造するうえでとても重要なものだと考えます。建築環境学では、このアメニティの考え方を尊重し、『空間のアメニティ』創造をめざすものとします。もう少しくだけた表現するなら、「人が生きがいをもって、生き生きと暮らせる空間の創造」をめざすものです。