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極端紫外線による半導体素子製造技術の実用化

兵庫県立大学高度産業科学技術研究所教授 木下博雄

はじめに

今後の半導体製造技術はMore Moore(さらに微細化)からMore than Moore(3次元化など)へとする動きもあるが、More Mooreは、今後も半導体製造技術の要であることに変わりはない。現在、ArF(193nm)液浸技術を用いた2回露光による微細化が進んでいるが、製造コストを考えると、より短い波長13.5nmの極端紫外線露光によるデバイスの製造への期待は大きい。

新技術開発の契機

この技術の検討は1984年から進められた。当時g線を光源とする縮小露光により1μm幅のパタン形成が進められた。次世代技術としてi線が検討されていたが、その先の技術に不安があった。そこで、X線等倍露光の研究が1970年代から進められた。この露光法は波長1nmほどの軟X線光源を用い、マスクとウェハを10数μmの平行なgapを介して露光を行う等倍方式である。解像度はマスクの描画精度に依存する。X線等倍露光のマスクには開口20mm角、2μm厚ほどのSiN等の薄膜上にTa,W等の吸収体パタンを形成したものを用いねばならず、開口内での薄膜の応力ひずみによる吸収体パタンの位置誤差が問題となった。そこで、X線領域でもg線やi線のような縮小光学系と薄膜を用いないバルクマスクによる露光法を検討し、反射光学系による縮小露光と反射型マスクの構成の露光方式を1986年に報告した。さらに、軟X線領域で反射率が70%ほど取れるMo/Si多層膜に着目し、この多層膜を反射ミラーとマスク基板に形成した波長13.5nmの反射縮小露光方式を提案した。1989年5月の電子・イオン・フォトンビーム国際会議(米国Monterey)にてX線縮小投影露光方式による1/5に縮小した0.5μmのパタンを発表した。翌年の1990年AT&T Bell研が追試を進め、0.05μmのパタン形成を実現し、本技術は一躍次世代露光技術として脚光を浴び、その後世界中の研究機関で開発が進められ、今日に至っている。

木下 博雄 兵庫県立大学
高度産業科学技術研究所 教授


1996年から兵庫県立大学が開発した大面積露光装置

主たる技術課題

開発当時この技術の主たる技術課題は、露光波長13.5nm近辺での反射光学系の設計と、高精度(0.1nm)に研磨された非球面ミラーの製作、高反射率(68%)を有する多層膜の開発であった。1989年に非球面ミラー2枚の縮小光学系を提案し、また、高精度な形状精度を有する光学系の研磨は米国Tinsleyと共同で進め、また、高反射多層膜はNTTの武蔵野電気通信研究所にて開発した。この結果、1995年までに10mm角の大面積に0.1μmのパタン形成を実現した。

その後、兵庫県立大学に移り、本格的な露光面積でかつ微細なパタン形成が可能なシステムの開発を進めた。この露光機を用いた国家プロジェクトASETが1998年から本学の放射光施設ニュースバルを拠点としてスタートし、実用化研究が進められた。

ASML社量産機により形成した16nm
ラインアンドスペースパタン

現在の課題は、光源の大出力化、マスクの無欠陥実現のための検査機の開発である。マスクの検査機開発は2002年からのJST CRESTにてシュバルツシュルト光学系を用いた装置開発を進め、60nmの吸収体パタン欠陥、20nm幅、1nm厚以下の位相欠陥の検出を可能とした。また、2008年からはJST CRESTにて次世代の計測技術として従来の光学系を用いないレンズレスな検査方式を提案、光源にフェムト秒レーザーの高次高調波からの13.5nmのコヒーレント光を用いたシステムの開発を進めた。この装置によりマスクの吸収体パタン欠陥の検査、線幅の一様性の評価を、簡易・安価・高解像度・高速評価を実現した。

商品化の概要

2008年にはオランダの半導体露光機製造メーカーであるASML社よりα-toolが開発され、また、2010年にはASMLからβ-toolが世界の半導体製造メーカー6社に納品され、露光特性、Mix & Matchでの位置決め性能が評価され、20nm世代の製造に問題なしとの評価を得た。また、2013年からは量産機が出荷されている。しかしながら、スループット100枚以上を満足させるレーザープラズマ光源のパワー向上に予想以上に時間を取られ、現状では30W、スループット30枚弱での利用となっている。

展望その他

現在では10nm以下のデバイスまでを視野に、露光光学系のNAの拡大や、2回露光技術、さらにはDSA材料を組み合わせたデバイス製造が検討されている。

この開発に対し、2010年に山崎貞一賞、2011年に文部科学大臣賞、2012年にOSAよりJoseph Fraunhofer Award / Robert M. Burley Prize等を戴いている。

   
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