国際交流・留学


「トビタテ!留学JAPAN」で得られる留学の価値

福井くんエバーグリーン大学へ出発

学部 : 経営学部4回生
氏名 : 日比 和輝
留学期間 : 2015年9月25日~2016年8月31日
留学先 : アメリカ・ワシントン州 エバーグリーン大学

交換留学でエバーグリーン大学へ

森林について学ぶために私は留学を決めました。兵庫県立大学の交換留学制度を利用し、トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムの奨学金を獲得して2015年秋から一年間のアメリカ留学ができることになりました。現在、私はワシントン州にあるエバーグリーン大学を2016年6月に卒業し、教授のもとで研究助手として働いています。森林を将来にわたって保全していくため、セントへレンズ山で環境の変化が与える森林と土壌への影響について調査をしています。
留学計画がなんとか順調に進んでいるのは、「トビタテ!留学JAPAN」から支給されている奨学金のおかげです。手厚い支援金により両親に心配をかけずに留学先での活動に集中することが出来ています。そして何よりも、「トビタテ!留学JAPAN」の支援企業による充実した研修を通して留学の意義を明確にできたこと、そこで出会った大学間の垣根を越えた優秀な学生と交流を持てたことが支援金に代え難い価値だと感じています。

セントヘレンズ山とスピリット湖 セントヘレンズ山とスピリット湖
森林 大噴火で失われた森林の生態系を調査

留学先のエバーグリーン大学はワシントン州の森の中にある学生数4,000人ほどの比較的小規模なリベラルアーツの大学です。私は秋、冬、春の三学期間を寮で5人のルームメイトと生活を共にし、毎日24時間が英語に囲まれる生活でした。小さな大学ということもあり、キャンパスを歩けばすぐ友達に会えるのでたくさんの人と交流を深めることができます。学生たちは芝生に寝転んだり、ギターを弾いたり、スケートをしたりとそれぞれが思い思いに放課後を過ごします。フレンドリーな人ばかりなので、誰とでも気軽に話すことができます。教授ともファーストネームで呼び合うということには驚きましたが、形式的でない深い議論をすることができます。

エバーグリーン大学は多様性の自由と個人の価値観を非常に尊重しているように感じます。キャンパスにいる人たちは多種多様で、ヒッピーやLGBT、障がい者の方、様々な文化的背景を持った学生がいます。トイレはジェンダーフリーで、車いす用のスロープやエレベーター、自動ドアがいたるところに設置されています。キャンパス内は毎日多岐に渡るイベントや講演会が目白押しで、いつも活気に満ちています。また、キャンパスから一歩外にでれば、息を呑むほど神秘的で美しい森が広がっています。ダウンタウンにはきれいで落ち着いた湖がありたくさんのヨットが停泊しています。メインストリートには個性的な店が立ち並び、店の壁一面に絵が色とりどりに描かれていて芸術的な町です。天気のいい日にキャピタルヒルを少し上がるとそこから雄大なレーニア山を眺めることができます。

ユニークなプログラムと質問する勇気

私は兵庫県立大学では経営学部に所属しており、経営学や統計学、コンピュータプログラミングを主に勉強していました。エバーグリーン大学では、三学期間を過ごし、秋学期と冬学期に“Introduction to Natural Science”、春学期に“Biogeochemistry”を履修しました。
エバーグリーン大学のプログラムは非常にユニークです。たとえば地質学、生物学、自然科学などといったように分野の異なる3人の教授が1つのクラスを担当してくれるので、1つの課題を違う分野の観点から見る力を養うことができます。学期ごとにアカデミックフェアがあり、学生がどんなプログラムにしたいかを本部棟の壁に書き、教授と話し合いながら決めていくことができます。 ライティングセンターやアカデミックセンター、コンピューターセンターなど学習のサポートが充実しており、毎日勉強に集中できる環境が整備されています。
プログラムは少人数クラスでのディスカッションが中心で、大教室で教授が一方的に話して終わりというものではありません。テキストだけの勉強にとどまらないところがアメリカ教育の良いところだと思います。教授が自身の研究内容をプレゼンしてくれたり、卒業生が来て講演をしてくれたりします。毎週一回はラボで一日の大半を過ごし、授業で学んだことを実践することができます。広大な森林の中へフィールドワークに出かけ、学問への興味を高めて知識を深められる環境もあります。さらに、毎週レポートを書き、プログラムの最後にプレゼンテーションすることで自分の学習の成果を確かめることができるようになっています。成績の評価はテストの点数だけでなく、発言、グループワーク、レポート、生徒からの評価など多角的に見られるので、学生間の競争は少なく、お互いに協力して勉強する機会が多いです。異なる文化や考え方の中で共に協力し合ってどのように課題を進めていくのかを経験し、国際的な感覚を養うことができます。

オリエンテーション
学期前のオリエンテーション

初めのころ、私が特に苦労したことはディスカッションでした。レポートや中間・期末テストはしっかりと時間をかけて準備することができますが、ディスカッションはネイティブの速い英語が飛び交う中で話の流れを見失ってしまい、議論についていくことがほとんどできませんでした。グループ内での計算結果に間違いを見つけ、一生懸命に指摘したのに上手く伝えられずにそのまま議論が進んでいってしまったときは自分の英語のできなさに非常に悔しい思いをしました。数学や科学は日本人として自信があったので、友達に計算問題を英語で説明するようにしていました。その中で英語を教えてもらうということを繰り返していくうちに少しずつ英語力が向上していき、ディスカッションにも参加できるようになっていきました。

日本では経営学部だったため、ラボでの実験も大変でした。器具の名前や使い勝手が覚えきれず、ブリーフィングも聞き取れないという状況でした。ビーカーに違った薬品を入れてしまってやり直しになったり、知らずにシャーレに熱を当ててしまい、実験に必要な微生物を全部ダメにしてしまったりしたこともありました。とにかく失敗ばかりしていました。
気が付いたことは、アメリカでは質問しない方が悪いということです。バカだと思われたくないという恥ずかしさもあり、これまではあまり質問せずに実験を進めていましたが、失敗を減らすために、とにかく分からないことがあったら質問することが必要でした。的外れになるかもしれない質問でも気にせずにどんどん教授に質問するようにしました。意外と教授も親切に質問に答えてくれて、気にかけてくれるようにもなりました。次第に実験で失敗することはなくなっていきました。
三学期間を通して日本との授業の違いに戸惑う毎日でしたが、友達や教授のサポートによって授業に慣れきて楽しめるようになっていきました。成績評価にもクラスで上位5%の生徒に入ると書いてもらい、英語が得意でなくても努力と改善でなんとかなるという自信につながりました。

様々な実践活動に挑戦

私はクラス以外に実践活動にも力を入れていました。トビタテの事前研修で学んだことは、いかに留学の成果を最大化するかということでした。そこで重要になってくるのが実践活動です。実践活動とは、座学や知識の蓄積ではなく、それをいかに実社会に役立てて多様な学びを得る活動のことです。私はクラスのない週末を利用して、環境団体を訪問してインタビューしたり、国立・州立公園でのフィールドスタディーやボランティアで環境保全活動に参加したりしていました。雨で凍えそうになる中、植林をして外来植物を取り除いていたのは今ではいい思い出になっています。
シアトルまで行けば名の知れた大企業がたくさんあります。そういった企業を訪問して実際にアメリカで働いている社員の方々とプライベートでお話できる機会を持つことができました。また、三学期間に渡り、日本語クラスの教員補助としてお手伝いをしていました。この経験は、アメリカ人の日本に対するイメージを知る上で、非常に勉強になりました。兵庫県ワシントン州事務所のボランティアとしてお正月イベントやコスプレイベントのお手伝いなどもしました。日本がどこにあるかわからないといった人がいて、思ったより日本はまだまだ知られていないと感じることも多々ありました。もっと日本に興味を持ってもらいたいという思いもあり、日本の料理を作って友達やルームメイトに振舞って日本を発信していけるように心がけていました。

留学中の活動にはいろいろなことがありましたが、中でも今まで一番大変だったのは夏の実践活動に向けて、森林調査のプロジェクトの一員として参加させてもらうことでした。そのためにとにかく教授に自分を売り込みました。ブログを作って自己紹介文やエッセイをまとめ、それをリンクとして貼り付けてアポイントのメールを送っていました。返信をしていただけない方もいましたが気にせずにプロジェクトのミーティングに顔を出して、自分が何にどう貢献できるのかをプレゼンをしたりしていました。あまりいい顔をされずにへこむこともありましたが、そんなとき支えになったのは、同じトビタテ生でした。目標達成に向かって、一生懸命がんばって楽しんでいるトビタテ生の姿が刺激になりました。クラスの教授に推薦状を書いてもらい、ボランティアで頑張ってきたことなども話して精一杯自己アピールを繰り返しました。教授に何度も掛け合って、交渉の末ようやくそのプロジェクトの一員として雇ってもらえることになりました。本当に大変なのは実際に働くことですが、これまでの三学期間の成果は実を結んだのだと思います。

留学での経験を通しての一番の成長は、語学力よりも、自分の目標に向かって自ら考え決断して、積極的に行動できるようになったことです。個人主義のアメリカでは主体的に自分から行動しなければ何も始まりません。なぜ留学をするのかその目的をはっきりとさせないまま留学に行っていたら、なんとなく毎日を過ごしてなんとなく授業を履修して単位を取って、ただ「あー、楽しかった!」で終わっていたかもしれません。「トビタテ!留学JAPAN」の事前研修やトビタテ生との交流を通して、私は森林を勉強し、それを実践活動で活かすという目的意識を明確に固めて来られたので、強い思いで充実した毎日を過ごせているのだと思っています。
学生のいいところは学びたいことを学びたいだけ学べてチャンスが山ほどあることです。そのチャンスの一つとして「トビタテ!留学JAPAN」があります。この奨学金のおかげで、自由に勉強し、様々な異なる考えや文化をもつ人々に出会い、日本ではできない経験をすることができました。留学によって得た経験は日本に還元できたらと思っています。「トビタテ!留学JAPAN」の応募は学生ならだれでもできます。最初は、受かったらラッキーぐらいの軽い気持ちでしたが今ではこの奨学金に応募して本当によかったと思っています。

   
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