国際交流・留学

トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム 第11期生に聞いてみました

学部:   工学研究科 1回生(当時)
氏名:   石本 睦
留学期間: 2019年9月1日~2020年2月1日
留学先:  デンマーク工科大学(DTU)ヘルステクノロジー部門/IDUN研究グループ

動機と研究内容
第11期生留学様子写真その1

私の留学は簡単に言うと研究留学なのですが、「この方のもとで学んでみたい」というのが留学へ踏み出した一番の動機です。当初は留学する気は微塵もなかったのですが、研究室の准教授の方がある論文を見せて下さり、その著者であるエドウィン准教授のもとで学びたいという想いが芽生えてきました。

また、もう一つの理由として、自身の研究分野は日本での研究例が非常に少なく、留学先となったデンマークをはじめ、ヨーロッパでは自身の研究分野はかなり盛んなので、最先端の技術を学んでみたいということもありました。

私の留学における目標は「デンマーク工科大学で、CDやDVDドライブに搭載されている光ピックアップユニットの原理を理解・応用し、自らの研究であるCD型デバイスによる医療検査技術の確立に組み込む」ことでした。CD型デバイスとは、内部にナノメートルからマイクロメートルの流路や構造を有したCD型化学分析装置のことであり、回転駆動によって化学反応を起こすことで化学的な操作を自動化し、熟練者のスキルによらず、迅速な医療検査が可能になります。この技術が確立すれば、充実した設備を持つ医療施設でしか出来ない血液検査等がごく簡単に実施できるようになり、検査の項目や場所、測定者は問わず、検査時間の短縮、その場での検査で人々の健康増進に一層寄与するという概念である「ポイントオブケア」の大きな前進に繋がります。

去年の9月ごろ、研究室の先生が読ませて下さった論文がデンマーク工科大学のものであり、CDプレーヤーやDVDプレーヤーがディスクから情報を再生したり記録したりするための部品である光ピックアップユニットの原理を化学センサーへ応用するという内容でした。デンマーク工科大学では化学センサーの開発に対して、自身がまったく考えたことが無かった光学的分野からのアプローチで進んだ研究をしていること、また、自身の研究内容が化学センサーに関するものであるということ、どちらもデバイスの内部に微細な構造を有していることなどからデンマーク工科大学と自らの研究に共通点を見出し、これからの産業にとってより良い成果を挙げることにつながると確信をもって今回の計画を考えるに至りました。

副次的な目標としては、研究において古典的な考えや狭い視野に縛られず、一見無関係に思われる他分野にも積極的に関わって研究に取り入れていく能力を身に付けたいと考えていました。様々な分野からアプローチを試みる習慣を身に付け、そこから得られる研究成果を活かして日本社会における、どこでもいつでも臨床検査ができるという概念である「ポイントオブケア」の前進に大きく寄与したいと考えていました。私は現在、誰もが臨床現場で予防診断が可能となるような端末の開発を目的として日々研究をしています。血液検査を始めとする様々な予防診断は、基本的にある程度設備の整った病院などの施設でしかできず、離島や過疎地域などでは定期的な予防診断は容易ではありません。もし、誰もが気軽に血液検査や疾病診断などを自分自身で調べることが出来れば、大きな施設が必要なくとも定期的なヘルスケアが可能になります。デンマーク工科大学ではその前身となる機器を教授と共に開発し、実験とその検証を行いました。

「トビタテ!」生同士の交流

「トビタテ!」では、合格者には留学の前後に研修が用意されています。留学を有意義なものにするため、また、留学先で得たものをアウトプットするための機会です。様々な留学内容の「トビタテ!」生とグループを作り、交流するとともに沢山のディスカッションやグループワークを行ないます。研修は事前研修・事後研修共に2日間・朝から晩まで行われ、非常にしんどいものでしたが、本当に楽しかったです。

デンマークに渡ってからは、日本人の方と出会うことはほぼありませんでしたが、1月ごろにフェイスブック上の「トビタテ!」生のコミュニティでフィンランドにてオーロラ観測の募集があり、そこに参加することが出来ました。出会う「トビタテ!」生たちはみんな初対面でしたが、とても仲良く過ごすことが出来、無事にオーロラの観測もすることが出来ました。

留学にあたって

自身の研究室の先生と、デンマーク工科大学の先生の間に交流があり、私のデンマークへの留学が決まったのですが、その手続きというものは私が考えていたよりもはるかに大変なものでした。滞在に関しての荷物を準備するのは特に問題ありませんでしたが、居住許可を得るための申請が特に難しく、申請に関しての詳しい方法はインターネット上でも情報が少なく、デンマークの入国管理局からもなかなか連絡が来ないので申請にはすごく時間がかかりました。

デンマークで味わった「違い」
第11期生留学様子写真その2

今回の留学先であるデンマーク工科大学は、首都コペンハーゲンから北の、コンゲンス・リュンビューというところにある大学です。一般的な工学分野だけでなく、環境工学や風力エネルギー部門など、環境を意識した分野も多数存在しています。

デンマークを始めとした北欧の国々は、福祉が充実していることで有名ですが、デンマークでは、住民登録したならたとえ外国人でも医療費は無料です。実際に留学の終盤に食あたりを起こしましたが、お金を払うことはありませんでした。ほかにも、生活様式や価値観など、日本と違うところはたくさんありました。留学においてそういった違いについて考えることも楽しいものだと感じました。

初めての海外生活
第11生留学様子写真その3

そもそも、私は海外へ行ったことがありませんでした。デンマークは英語が通じるのですが、特に英語がペラペラなわけでもなく、また、デンマークについてさほど詳しくもありませんでした。到着してすぐはスマートフォン回線の契約をどこですればよいかも分かりませんでしたので、あらかじめ印刷していた地図で下宿先にたどり着きました。

留学が終了するまで、細々とした問題はたくさん出てきました。役所での住民登録だとか、いつも日本で使っていた調味料がどこにも売っていないだとか、デンマーク語の難解さなど、本当に大変で、何度も周囲の人に頼るシーンがありましたが、みんな嫌な顔一つせず、親身に話を聞いてくれました。帰りたいと思った日もありましたが、やはり楽しい日々でした。

研究グループでのインターンシップ
第11生留学様子写真その3

私の場合は留学先で授業を受けて単位を取得するような形の留学ではなく、大学内に存在する、国と共同で研究を行っている機関のもとでインターンシップを行うというものでした。特に決まった時間に来なければならないわけではありませんが、毎週の研究報告があるので、だらだらとはできません。最初は会話もままならず、研究の進め方もつかめていなかったので研究グループ内の雰囲気もどちらかというと会社じみていたのですが、毎週金曜日は大学内のバーにみんながお酒を飲みに行ったり、ほぼ毎日14時ごろにはみんなで集まって軽いお茶会のようなものをしたり、ゆったりとした時間も過ごすことが出来ました。また、直属の上司である准教授はとても優しく、研究を非常に円滑に進めることが出来ました。

留学において終始問題となったのは、やはり言語の壁でした。「トビタテ!」に応募した段階で会話フレーズの勉強やオンライン英会話などを度々していましたが、実際に留学が始まって会話になると、話すべきフレーズがとっさに浮かんでこず、会話のテンポがどうしても悪くなってしまうことが多々ありました。また、私が所属することになった研究グループでは、お昼ご飯は基本的にみんなでテーブルを囲んで食べるのですが、英語でのジョークや笑い話など、少し言い方を変えられたり、早口であったりすると全く内容が分からなくなることもありました。次第に慣れていくことは出来ましたが、最初のうちは何度か気まずい思いも味わいました。

自信にとっての留学の価値

私にとって今回の「トビタテ!」を利用した留学は、「一歩踏み出した経験がいいものになった、今後の自身の振る舞いに良い方向に作用する重要な経験」であると考えています。従来保守的な私にとって、自身で留学計画を練り、容易ではない奨学金を獲得し、単身初めての海外留学で5か月間過ごしたというのはとても大きな意味を持っています。

一歩踏み出せたことが重要なだけでなく、留学先でなんとか論文の執筆までこぎつけ、また、ある程度客観的な成果を出せたとして留学先の博士課程にも勧誘されました。「お金さえ払えば行ける留学」ではなく、自身にとって間違いなくプラスになる経験が出来たと思っています。踏み出していい結果が得られたというのが何よりも自分にとって価値があったと感じています。今後社会に出ていく上での良い自信になりました。

   
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