国際交流・留学

令和2年2月25日

平成31年度/令和元年度 国際交流だより第6号

エバーグリーン州立大学交換留学生(派遣)(2018~2019)体験談

大学間協定締結校である、エバーグリーン州立大学に留学し、2019年の夏に帰国した経営学部3年生の鈴木康亮さんの体験記(日本語・英語)を掲載します。大自然に囲まれた大学で、充実した9カ月を過ごして帰国しました。エバーグリーン州立大学への交換留学を考えている方はぜひお読みください!

1.留学期間
2018年9月~2019年6月まで
2.応募したきっかけ

高校を卒業したあたりから、英語の学習の停滞を感じていました。やる気が減っている気もしていました。「このままダラダラ同じやり方でやっても意味ない」。なぜかしっくりこない感覚と格闘した結果、今までやってきた英語学習を改善する必要に気づき、そのためには留学が一番良いと思いました。膨大な練習量・サンプルが得られるし自然と改善点や新しい気づきが得られます。加えて、未知の環境で暮らせることも魅力でした。良いことしかないと思い、大学入学と同時に情報を集め始めて、前期試験後に英語試験の勉強を開始し9月に試験を受け秋に交換留学に申し込みました。運もありましたが、かなり集中して準備したので決まった時はとても嬉しく、なぜか緊張したのを覚えています。

他の理由として、日系アメリカ人の親戚が同じ州に住んでいることもきっかけの一つでした。『あの日パナマホテルで』の舞台となった街をもっとよく知り、第二次世界大戦中アメリカ西部に住んでいた日系人の繁栄・苦闘の歴史を現地で学びたいと思っていました。留学が修了した今振り返ると、そこから得たものは大学での成果と同じくらい重要でした。

3.授業について

基本的に一学期で16単位の授業(週3〜4)を一つ受講しました。

ビジネスプラン、ダンス、統計学、三角関数、木工などの授業を履修しました。

ここでは、春学期に受講した ”Woodworking: Seating” について少し紹介します。

これは火曜日の夜5時半から9時半までの授業で、ベンチ・椅子・ストゥールの3種類から好きなものを選び、最初のデザイン設計・計算・木材選び・切断など全ての工程を受講者が行い、教授やアシスタントは必要に応じて助言や指導をするような本格的なクラスです。中間、最終発表以外は個人がそれぞれ自分のペースで作業をします。

僕は比較的硬めの木材Western Mapleを使ったBar Stoolを作りました。バーにあるような背もたれがない高い椅子です。ノコギリの経験しかないほぼゼロからのスタートだったので、何度も躓き、悩み、助言を貰いました。途中まで木をまっすぐに切ることさえもできませんでした。後半からは作業場が開いている金曜日と水曜日の午後、土曜日も通い、早い時は朝の10時から作業場が閉まる夕方5時まで作業や練習をしました。作業後はプールで泳いだり甘いクッキーを食べたりしてストレス解消をしていました。

今年度最後の作業場オープン日、6時間ヤスリをかけ続け、文字通り最後の最後でやっと完成し翌日のプレゼンテーションで自信たっぷり発表することができました。

かなり遠回りをしましたがこの一つの作品を作る過程で、木工と自分自身について多くを学び、木の魅力に気づき、芸術 (Art) の価値を実感しました。

エバーグリーン州立大学には陶芸や金属加工のクラスなどもあります。手厚いサポートがあるので初心者でも心配ありません。ぜひ美術のクラスを受講してみてください。

関節部分には日本の伝統工法「木組み」を使っています。3.5度の角度がついたものと垂直のもの伏せて12個あります。
関節部分には日本の伝統工法「木組み」を使っています。
3.5度の角度がついたものと
垂直のもの併せて12個あります。
これを練習と実践に8割以上の労力と時間がかかりましたがうまくはまるとスッキリします。
これを練習と実践に8割以上の労力と時間がかかりましたが
うまくはまるとスッキリします。
1枚の木の板からシンプルなストゥールができあがりました。
1枚の木の板からシンプルなストゥールが
出来上がりました。
2つの木材を接着したシート。
2つの木材を接着したシート。
先生の一眼レフで。
先生の一眼レフで。
4.生活環境について

大学のアパートはキッチン、トイレ、シャワーは共有で、ショッピングセンターが近くにないので、不自由でストレスが溜まるかなと想像していました。しかし、実際行ってみると、広大な森林に囲まれた大学内の静かなアパートでした。初対面のハウスメイトはSukiと言う名の黒い犬でした。最初のアパートは掃除分担がうまくいかず不衛生な時がありましたが、賑やかで家庭的な雰囲気でした。12月から引っ越した先のアパートは対照的で、あまり人気がない静かな家でした。自分には賑やかな環境の方が合っているかもしれないと今振り返ってみて思います。

エバーグリーンでの初めての朝の空気の匂いは今でも覚えているほど印象的です。朝起きて外に出ると、樹木の匂い、今まで身近ではなかった自然の空気が肺いっぱいに満たされます。雨が降るとより一層深い匂いになります。勉強で脳や体が疲れた時や休日にはしょっちゅう森に足を運び、ツリーハウスやビーチで友達と遊びました。

僕は生まれてから20年間住宅街で暮らしていたので、アウトドアという言葉とは無縁でした。それもあって、はじめ森に囲まれていると聞いただけで興奮と緊張がありました。森林浴で安らぎがえられると言われていますが、実際に何度もその体験をしました。とても健康的な生活ができたため、病気になったことはありませんでした。

ハウスパーティーを企画したり、森に遊びに行ったり、唐揚げを2kg作ったりと遊びを一緒に本気で楽しめる友人に恵まれたので週末や夜が毎回楽しみでした。

どういう生活環境が自分に向いているのか。また、最適な学習環境はどうしたら作れるのか、などについて今までになく考えるキッカケを与えられたと思います。

アパートから森に入って徒歩10分の崖
アパートから森に入って徒歩10分の崖
午後8時36分、夜景のゴールデンタイム、シアトルから
午後8時36分、夜景のゴールデンタイム、シアトルから
5.英語学習のアップグレードについて

留学中特別にしたことはオリジナル辞書の作成でした。耳や、目に入った新しい表現や単語をその具体的な文脈とともにケータイのメモに書き記していました。誰が何を、なんの話で、どの場面で、どのように言ったのかまでメモしたので今見てもはっきりと思い出すことができます。映像でモノを理解したり記憶したりするのが得意な自分にとっては、かなり効果的だと気付きました。自然と始めたことでしたが、表現の幅を広げるのに信じられないほど貢献しています。留学中は何度も見返して復習しましたし、帰国した今でも使っています。

大学での生活と休暇中のホームステイの10ヶ月の期間で英語学習の課題がはっきりしました。今まで気づかなかった聞き取り・発音が苦手なリエゾンのパターン、句動詞の習得など帰国後に優先して取り組むポイントが見えるようになりました。

6.価値基準、考えの変化について

よく留学関連の本や体験談で言われるように、多民族の大陸アメリカでは日本よりも多くの種類の考え方に触れられます。健康、性差別、教育、社会身分など、それぞれについて色んな人が自分の価値観に基づいて積極的に情報を発信し問題を提起しています。僕自身、今まで気にもならなかった事について考え価値観が変わった(更新された)経験をしましたし、国や地域が変わればまた違う体験をしていたでしょう。このことは留学の醍醐味のひとつだと思います。

決して楽ではありませんでしたが、この10ヶ月には信じられないほどの学びと感動がありました。簡単な体験記になりましたが、読んでいただきありがとうございます。

鈴木康亮さん体験記(英語要約版)

After graduating from high school, I felt my English study was plateauing. I also had less motive. Study abroad programs were appealing to me, and I thought it was a very good way to improve my learning process because I can exercise all elements of language every day in a real-life situation. Plus, I was interested in living in a different culture and climate.

Another reason why I desired to study in the Evergreen State College was that I had extended families in Seattle and Seattle surroundings. They are Japanese Americans whose ancestors immigrated to Seattle before in the 1920s and overcame tough time during and after the war. I always wanted to hear the story from those people. They welcomed me with the greatest hospitality, and let me experience a lot while I was there.

The most enjoyable class I had in the Evergreen State College was the woodworking in spring. The class was held on every Tuesday evening, from 5:30 to 9:30. I designed and fabricated a stool in beautiful western maple, with a height of 30 inches. I failed countless times for multiple occasions and took longer to get used to every process. It was such a frustration all the more because I was quite a perfectionist. In the latter half of the quarter, I worked in the woodshop for hours on Fridays and Saturdays. Some time I worked for 6 hours straight, which brought me pain in my neck and lower back. However, it was constantly fun to work on the project in consultation with shop aids and teachers. I was advised on critical points in the design and fabrication process. They told me how Japanese-oriented woodwork techniques are sustainable, and are applied in architecture. In the first class, the concept of 木霊 “Kodama” was introduced, which is an idea that every tree has a spirit in it. I thought that the idea has existed only in Japan, but soon found it false. If you walk into the evergreen forest, lots of decorated trees can be spotted. Or, you’ll see a tree with a wood board that says “respect our mother”. The concept of “Kodama” is in everyone who loves nature.

At the last day for an open shop, I sanded every single part of my stool for 6 hours and happily completed it at the last minute (literally). Soon afterwards I could not stop petting my stool and feeling its smoothness. Awe, so good. I enjoyed my final presentation, and it’s unforgettable that I was having a smile on my face from its start to end. Through the course I came to have a deeper respect for the materials, people and processes involved.

During these nine months in the Evergreen State College, I developed a somatic understanding of visual art, awareness on my disciplines, and a meaningful relationship with people. I am grateful that I could study at the Evergreen State College. I miss Evergreen. I thank all who supported me while I was there: my relatives in Seattle, friends and family in Japan, my partner, slugs, and evergreen faculties – to name a few.

エバーグリーン州立大学への交換派遣留学について

エバーグリーン州立大学は、アメリカ・ワシントン州の州都オリンピア市に位置する州立大学です。本学との交流の歴史は長く、30年を超える提携関係があります。

エバーグリーン州立大学はユニークなリベラルアーツの教育で全米に知られている大学です。

エバーグリーン州立大学への交換派遣留学に興味がある方は、国際交流機構までご相談ください。

お問い合わせ:

国際交流機構(国際交流センター内)

TEL: 078-794-6683
e-mail: kokusai@ofc.u-hyogo.ac.jp
   
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