時代が大きく変化する今、新しい時代にふさわしい、新しい大学の誕生は喜ばしい限りです。しかも、神戸という、豊かな創造力を基盤に歴史と文化を築いてきたこの都市に生まれる総合大学。兵庫県立大学の誕生は、21世紀の日本の新しい可能性を示唆しているとも言えるでしょう。
20世紀の日本は、工業化を目標に掲げて海外の技術を導入し、それを適合させることで発展してきました。残念ながら、独自性を生み出す創造力は豊かであったとは言えません。
ところがそんな中にあって、神戸を中心とした兵庫は、独自性を発揮し発展してきた希有な地域です。例えばファッション、あるいはお菓子に代表される食文化、また都市構造においても独特のスタイルで、ほかにはないオリジナル性を育んできました。
21世紀に求められるのは、まさにこの「オリジナル性」です。人も企業も大学も「オリジナル性」を磨き、個の力を発揮することこそ肝要です。その点、3つの伝統ある大学の独自性を継承し、ここ神戸に根ざす兵庫県立大学なら、学生のみなさん、一人ひとりのオリジナル性を見つけるのにふさわしい場になるのではないか、と期待しています。
オリジナル性と並んで、新しい時代の大学に欠かせないのが国際性です。組織やシステムの国際化だけでなく、学生一人ひとりの真の国際化を実現するには、まず世界に通用するアイデンティティを持つこと。そしてそれを毅然と表現できるプレゼンテーション能力を持つことが大切です。
その点、兵庫県立大学では、1年次からゼミナール形式の授業を採用し、ディベートのテクニックを学べるなど、能力向上の環境が整っています。
こうした環境を存分に活用し、国際社会に通用する力を身につけてもらいたいと思います。
私は長年、メーカーにおいて様々な研究開発やモノづくりにたずさわる中で、常にチームワークの重要性を感じてきました。ぜひ、みなさんにも、学生時代だからできるチームワークの大切さを体験していただきたい。友人や先生はもちろん、地域の方々とも力を合わせて、ひとつのゴールに向かって挑戦する。大学は自己研鑽だけでなく、相互研鑽ができる貴重な場なのです。
ただし、チームにおいては、各々が個人の力をあますことなく発揮するのを忘れてはなりません。自分には何ができるのかを考え、そして自分の個性や専門性を見つけ、磨いていく。今やどの企業もプロフェッショナルな人材を求めています。やがて社会に貢献できる、誰にも負けない専門性を兵庫県立大学で身につけてください。
時代をつくっていくのは、いつでも若者です。可能性に富むこの大学で学んだみなさんが、日本の新しい時代を築いてくれるのを心待ちにしています。