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式辞など

平成30年度学位記授与式 学長式辞

学長式辞

本日、ここに学士、修士、博士の学位を取得され、卒業式を迎えられた皆さん、誠におめでとうございます。兵庫県立大学の教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。また、この日に至るまで長い年月にわたって、皆さんの成長を支えてこられたご家族、関係者の皆様に、心から敬意と感謝の意を表します。

本年度は、学士1,213名、修士は、専門職学位を含め370名、博士15名、論文博士3名合計1,601名が学位を取得されました。本学が送り出した卒業生は皆さんを含めて合計20,433名となりました。前身の旧3県立大学等を含めますと、総計73,509名となります。

本日の学位記授与式には、大変お忙しい中、皆さんをお祝いするために、兵庫県知事井戸敏三様、兵庫県議会副議長小西隆紀様をはじめ多数のご来賓にご臨席を賜っております。ご来賓の皆様方には厚く御礼を申し上げます。
また、後ほどご祝辞を頂戴いたしますが、昨年4月から本学公立大学法人の理事長として、五百頭旗真先生にご就任を頂いております。

今年は、初めて学位記に加えて副専攻課程の修了証もお渡し致しました。本学では幅広い知識と実践力を身につけていただくために、主専攻に加えて、「地域創生人材」、「グローバルリーダー」、「防災リーダー」を育成する三つの教育プログラムを、副専攻として用意しております。副専攻ごとに定められた一定の単位数を取得すれば修了証をお渡します。今年は、地域連携活動などを通して兵庫の地域を学ぶ「五国豊穣プログラム」のみでしたが、二年後には三専攻全てに副専攻修了証をお渡しすることができます。所属する学部の卒業所要単位数を揃えた上で、余分の単位を修得しなければなりません。大変な努力をされて修了証を授与された6名の方々に敬意を表します。

いま、皆さんの脳裏には、大学生活の様々なシーンが走馬灯のように去来しているのではないでしょうか?ゼミの発表会や卒業論文で苦しんだこと、研究の進展方向が見えてきた時の喜び、実験のレポートや厳しい実習に苦しんだこと、進級や卒業に必要な単位の取得がうまくいかず冷や汗をかいたこと、友人と青春を共有しながら精一杯打ち込んだクラブ活動、下宿や学生寮で学友と語り合ったことなど、色々なことを思い出されていることと思います。これらの思い出とその中で得た友人は、これからの皆さんの長い人生において掛け替えのない財産となります。どうか、いつまでも大切にして下さい。

さて、今回は平成最後の学位記授与式となり、皆さんは新しい元号の下で社会に出て行く最初の世代となります。皆さん方の多くは平成初期に生まれ、その中で成長した、正に平成の申し子ともいうべき世代です。平成は、明治維新以来、我が国として戦争に縁のなかった唯一の時代です。私達は、先人の大きな犠牲によって築かれた平和な時代を謳歌してきたと言えます。しかし、少し見方を変えますと、平和という先人の遺産を食い潰しているのかもわかりません。

振り返って見ますと、平成時代はベルリンの壁が崩壊し東西ドイツが統一に向かう足音と共に始まり、その直後に開催されたアメリカのブッシュ大統領とソビエト連邦のゴルバチョフ最高会議議長の両首脳によるマルタ会談で、第二次世界大戦末期のヤルタ会談に始まった米ソ冷戦の終結が宣言され、両国は新たな協力関係を築きました。

卒業証書を授与する学長

それまでの国際政治は米ソを盟主国とした東西冷戦の緊張関係の中で動いていましたので、戦後の昭和を生きてきた者にとっては、これで世界は平和になるのだという大きな期待を持ちました。まさに平成元年は歴史の分水嶺でした。翌年のイラクのクウェート侵攻も、米ソの良好な関係の基にクウェートを解放することができ、更に、その翌年には、ソ連は崩壊してロシア連邦となり、米ロの新しい関係は順調に進んでいるように見えました。

このように、「冷戦後」の滑り出しは順調でしたが、マルタ会談から30年が経過した今の世界はどうでしょうか。ロシアがウクライナ領のクリミアに侵攻したり、アメリカのトランプ政権が米ソで結んだ歴史的な中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄したりするなど、歴史の歯車が逆回転しかけているのではないかと懸念されます。加えて、米中は貿易問題で激しく対立し、また、米露中の3国が軍事で張り合う状況となっています。このような中、世界各地で宗教対立や民族対立が先鋭化して過激思想によるテロの頻発や、内戦による難民の続出など、世界のトレンドは協調から対立、分断と不寛容な方向にどんどん向かっているように見えます。皮肉にも平成の終わりに、30年前とは違う形で壁が作られようとしています。皆さんはこのような状況をどのように受け止め、どのように考えていますか?

国内に目を向けますと、平成の時代に入って直ぐ、いわゆる「バブル崩壊」が起こり、経済の低迷が続きました。1980年代、昭和の末期には日本経済の黄金期が続き、「Japan as Number One」と言われ、世界の頂点を極めつつありました。しかし、次第に土地や株式の資産価値が実体経済と乖離してしまい、バブル経済は一気に萎んでいきました。

それ以降、経済の停滞は続き、「失われた20年」とも言われ、今もその後遺症が色濃く残っています。巨額な財政赤字が積み重ねられる中で、少子高齢化、人口減少、東京一極集中による歪な社会構造など様々な問題が顕在化してきています。さらに、これに追い打ちをかけるように、大地震や風水害など大きな自然災害が頻発しており、待ったなしで社会の立て直しを図らなければならない状況になっています。しかし、将来の日本社会を真剣に再設計しようという機運が中々生まれてきません。それどころか、行政、産業、学術など様々な分野で疑惑や不正、記録の改竄や捏造など、社会正義をないがしろにする事態が多発しています。なぜ、このような状況に陥っているのでしょうか?

旗を背に話す学長

熱い情熱と柔軟な発想ができる、皆さん方のような若い力が社会で生かされていないからではないでしょうか?一人ひとりの力は小さくとも、多くの力が揃えば社会は動きます。皆さんには、つまらない不条理なことにははっきりと「否」と言い、偽物と本物を見分ける高い見識と倫理観を持っていただきたいと強く願っています。どのような道に進もうとも、皆さん方の多くは将来リーダーとして活躍されます。リーダーは先見性と俯瞰力、独創力をもって、日々的確な判断を下さなければなりません。卒業後も広い意味での学習を怠らず、物事の本質を見抜く心の眼、心眼を養い、より高い矜持を持って組織や社会をリードされることを期待しています。

もちろん、大学自身もそのような人材を育成するための不断の改革努力を続けなければなりません。学問の基盤をしっかり守りながら、次代が求める社会の在り方、科学技術の役割をしっかり視座に捉え、未来社会を牽引し、その中で活躍できる人材の養成に努めなければなりません。この意味において、グローバル化とサイバー化が急速に進展する時代的要請に応えるため、本学は4月から神戸商科キャンパスに国際商経学部と社会情報科学部を新設します。現在、キャンパス内で国際学生寮の建設を急ピッチで進めています。9月には多くの優秀な留学生が国際商経学部のグローバルビジネスコースに入学してきます。異文化理解、多文化共生の中でキャンパスの国際化が一層進むことを大いに期待しています。

本日卒業される経済学部、経営学部の皆さんには出身の学部がなくなるという寂しい気持ちも湧いてくることと思いますが、新しい国際商経学部の中に経済学コース、経営学コースを設置し、両学部の伝統をしっかり受け継いでおります。どうか国際商経学部の卒業生を後輩として暖かく指導して下さることをお願いいたします。

卒業生の皆さん方の未来は前途洋々です。自らの手で未来を切り拓いていくことができます。しかし、未来は待ってくれません。気が付くと一歩も前に進んでいない現実を突き付けられることがあります。あのアインシュタインでさえ、「自分は先のことなど考えたことがない。直ぐ来てしまうのだから。」と嘆いています。日々地道な努力を忘れず続けて下さい。卒業される皆さんが、それぞれの道で大成されることを祈っています。また、その活躍が本学の評価を高め、学生の勉学へのモチベーションを向上させます。皆さんの肩には、兵庫県立大学の名声と未来も掛かっています。

式辞を終えるに当たり、皆さんに学長として餞の言葉を贈りたいと思います。シンプルですが、「心眼を秘めた真の知識人」として社会で活躍されることを期待します。物事の本質、目に見えない真実を見抜く力を磨いて下さい。先ほどお話した本物と偽物を見分ける力はまさにそうですが、モノづくりや科学の分野では科学的な推論や経験から、見えない現象の本質を理解する力と言うことができます。例えば、私の専門で言うと、目に見えない電波の振る舞いが心に見えてきて様々なデバイスや装置設計のアイデアが湧き出てくるというようなことです。

最後に、「卒業」は終わりを意味するものではありません。皆さんと兵庫県立大学との繋がりは永遠です。本学に対して、卒業生だからこそできること、卒業生にしかできないことを是非していただきたいと思います。また、大学に残る私たちは、青春の故郷として、皆さんが必要な時にいつでも戻ってこられる場となるように努力いたします。教職員一同いつもお待ちしております。本日は、誠におめでとうございます。 以上をもって式辞といたします。

 

平成31年3月22日
兵庫県立大学 学長 太田 勲

   
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