大学案内 About us

式辞など

令和3年度学位記授与式 学長式辞

本日、学士、修士、博士の学位を取得され、卒業の日を迎えられた皆さん、誠におめでとうございます。兵庫県立大学の教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。また、この日に至るまで長い年月にわたって、皆さんの成長を支えてこられたご家族、関係者の皆様にも、心からの敬意と感謝の意を表します。

本日、学士1,260名、修士は、専門職学位を含め385名、博士25名、論文博士4名合計1,674名が学位を取得されました。兵庫県立大学として送り出した卒業生は皆さんを含めて合計25,559名となりました。前身の旧3県立大学等を含めますと、総計78,635名となります。

本日、本学を運営する兵庫県公立大学法人理事長の五百旗頭真先生にご臨席をいただいており、後ほどご祝辞を頂戴いたします。また、大変お忙しい中、兵庫県知事齋藤元彦樣の代理として企画県民部長の小橋浩一様、兵庫県議会副議長谷口俊介樣にもご来賓としてご臨席をいただいており、後ほどご祝辞をいただきます。本学の後援会、同窓会の代表の方々も、ご多忙の中、皆さんをお祝いするために、ご来賓としてご臨席くださっております。ご来賓各位には衷心より御礼を申し上げます。

学位記授与式は、卒業される皆さんにとって人生の大きな節目の行事です。ご両親やご家族、在学生の方などと一緒に同じ会場で皆さんの門出をお祝いすることが本意ですが、残念ながら新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないため、ご父兄、関係者の方々にはご入場をご遠慮いただき、卒業生の皆さんと私たち教職員だけによる式典といたしました。

一昨年は式典を中止して式辞の動画を卒業生、修了生の皆さんにリモート配信するだけでした。昨年は、密を防ぐために、学部と研究科を二つのグループに分けて午前と午後の二部制で実施いたしました。今年は卒業生だけですが、このように一堂に会して開催することができ、大変嬉しく思っております。また、この式典の様子はライブ配信しておりますので、ご家族や関係者の方々にはネット越しに皆さんの晴れの姿をご覧いただいております。

さて、COVID-19感染症が日本で初めて確認されてから既に二年以上が経過しました。この間、我国では約600万人以上の方が感染し、亡くなられた方も2万7千人を数えています。全世界では、感染者が4億7千万人、死者が600万人を超えていると言われております。皆さんはこの煽りを受けて、学生時代の貴重な時間の多くを様々な制約の中で過ごすことを強いられました。海外留学や国際会議での研究発表、様々な競技大会への出場や演奏会などのクラブ活動、あるいは友人との旅行など、多くの計画を断念せざるを得なかったことでしょう。

また、キャンパスへの入構制限やオンライン授業の実施などで、友人と机を並べて勉学に励んだり、語り合ったり、あるいは先生と議論したりする本来の充実したキャンパスライフも大きな影響を受けました。私たちは皆さんが可能な限り刺激の多いキャンパスライフを取り戻すことができるよう、対面授業や研究活動、クラブ活動などの早期再開に努めてまいりました。皆さんが、兵庫県立大学の学生としての矜持と高い感染防止意識をもって私たちの期待に応えてくださり、クラスター感染を引き起こすこともなく今日を迎えています。改めて、皆さんに感謝いたします。

他方、コロナウイルスは、皆さんから物理的な時間までは奪っていません。このパンデミックにより日常とは異なる形で与えられた時間を有効に活用された方も多いのではないかと思っています。私は、皆さんに、『この状況を奇貨として教養を高めたり、語学や情報のスキルを磨いたり、これまで積み残してきた分野の勉強に取り組むなど、自己研鑽に努めること』などを、メッセージを通して何度かお願いしてきました。このことを実行できた方も、そうでない方もおられると思いますが、この未曽有の試練の中で、それを乗り越えるために友人との絆がより強まったり、自然や生命、人間社会などに思いを巡らし、生きていくための意味など多くのことを深く考えたりされたことと思います。私は、これらの貴重な経験が、皆さんのこれからの人生を様々な形で豊かにしてくれることを願っており、またそうなることを信じています。

人類は、おそらく有史以前から様々な感染症に襲われながら生き残ってきたと考えられますが、歴史上最も深刻な感染症パンデミックは、十四世紀にヨーロッパを襲ったペストと言われています。当時のヨーロッパ人口の三分の一以上の命が失われました。この流行は十八世紀まで続き、医学が未発達であったため、人々に激しい恐怖心と混乱を引き起こし、道徳の混乱や経済崩壊など大きな爪痕をのこしました。ペスト菌が発見されて原因が究明されたのは十九世紀末になってからです。

新型コロナウイルス感染症に関連して俄かに注目されるようになった「スペイン風邪」は、約百年前に世界を席巻したウイルスによるパンデミックです。当時世界の全人口十八億人の三分の一が罹患し、死者は約四千万人、最大一億人以上という説まであります。しかし、当時、コレラや結核などのような致死率が高い、あるいは不治の病と言われる感染症が他にもいくつかあったことに加えて、世界大戦という社会的背景や当時の産業構造・就業構造では経済への影響が限定的であったため、このパンデミックは一過性のものとして歴史に埋もれていました。

細菌性の感染症は効能の優れた抗生物質が次々と開発され、1970年頃には「感染症に関する教科書を閉じる日がきた。」と言われたこともあります。しかし、臨床現場では抗生物質耐性菌の出現が深刻な問題となっていますし、過去の感染症が蘇る再興感染症やエイズなどの比較的新しい新興感染症も問題となっています。加えて、普通風邪のコロナウイルスが突然変異した新型コロナウイルスは、21世紀の今、現在進行形で、猛威を振るっています。

このウイルスはRNAウイルスと言われる変異しやすいタイプですので、いつまた新しい型のウイルスが現れても不思議ではありません。現段階では、ワクチン開発とウイルス変異のいたちごっこは避けようがありません。35億年という長い年月をかけて細菌のような原核生物が多様な生物に進化してきたと言われており、ウイルスに至ってはその進化の歴史すら分かっていません。いま、自然は新型コロナウイルスを通して「人間よ、おごるなかれ!」と戒めているかのようです。人間は、人智の及ばない自然の奥深さをもっと、もっと畏敬しなければなりません。

しかし、その折も折、人間が人間の手で人間を大量に殺戮する戦争がウクライナで引き起こされてしまいました。ちょうど今日で、ロシアのウクライナ侵攻が始まって一ヶ月となりますが、街は破壊され多くの市民の命が奪われ、多くの兵士も無意味に無残な死を遂げています。一刻も早く武力行使を停止して、対話による平和的解決を図らなければなりません。

『この世界には、人間の命より大切なものは他に何もありません。』兵庫県立大学では、3月8日に武力行使の即時停止と平和的解決を求めてウクライナ侵攻への抗議声明を出しました。本学設立の基本理念の最後に、『世界・人類の幸せに貢献しうる大学』と謳っていますように、教育・研究・社会貢献活動の根底には『人類社会の発展と世界平和への貢献』があります。この意味において、当然、この暴挙を傍観できるはずもありません。今後は、抗議声明にとどまらず、具体的な支援活動を進めることが求められます。

この侵略戦争が起こった歴史的、政治的背景や地政学的要因などについては多くの有識者や学者の方々によって解説されていますが、このようなことを未然に防ぐ対策や解決策については有効な手立てを示し切れていないように見えます。近年、世界では民主主義国家が減少して権威主義国家が増加してきており、また、民主主義国家と言われる国の中にも、異論を封じ込め強権的な政権運営を行おうとする勢力が力を伸ばしてきているように見えます。

正にこのウクライナ侵攻は、民主主義国家であるはずのロシアが、独裁的な政権運営によって引き起こした暴挙と言わざるをえません。健全な合議制やチェック機能の働く政治体制があれば、違う選択肢があったのではないでしょうか。最近、民主主義の劣化が盛んに言われています。これは為政者の意図が大きな要因でもありますが、私たちも含めて各国の国民が政治に無関心であったり無知であったりすることが、その流れを助長していると思われます。

分断統治という言葉をご存知と思いますが、権力者すなわち支配者は支配される側の分断を図り、例えば、一級市民と二級市民に分けて扱いに差を付け、互いに争わせ、支配階層への批判の矛先を逸らせます。江戸時代の日本の身分制度もそうです。現在も、支配欲の強い政治家は、少し形を変えて国民を敵と味方に峻別したり、特定の意見にレッテル貼りをして議論抜きで排除したりする傾向が目立ちます。

昨年のアメリカの大統領選挙後の混乱も、移民排斥と反エスタブリッシュメント感情の強い白人労働者がアメリカファーストを標榜する前大統領を無条件に受け入れ、それを説得する勇気ある政治家がいなかったために生じたと言えます。民主主義大国アメリカでも一歩間違えば独裁への流れができかねないことを示しています。現在のロシア国内の政治状況を反面教師として眺めれば分かるように、虚偽を織り交ぜたプロパガンダ、国内外の情報の遮断、言論の自由の強権的抑圧等々が行われれば、これまで人類が営々として築いてきた民主社会は一気に暗転します。

皆さんは、本学での学びを活かして、この激動する国際社会の中で本物と偽物を見抜く力をしっかり養い、理不尽なことや間違ったことには、誰にでもはっきり「ノー」と言える人になって下さい。そのことが、人類社会の発展と平和に繋がる大きな力となります。

さて、就職される皆さんは4月から新しい世界に足を踏み入れます。いま、時代は大きなターニングポイントにさしかかっており、コロナ禍の経験を通して人々の価値観や人生観、企業の経営戦略などが変化したため、ニューノーマルの時代に向けて社会構造、産業構造、経済活動が急速に転換しようとしています。それを牽引しているのが、様々な分野で一気に進もうとしているDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

政府はICT化を進めるための旗振り役としてデジタル庁を設立し、これまでは改革速度が遅いことで悪評の多かった行政サービスでも、電子政府、電子県庁、電子市役所などのデジタル化を一気に進めようとしています。皆さんの多くはものづくり産業からサービス産業まで様々な企業や金融機関、医療機関などに進みます。申すまでもなく、DXは情報機器の導入そのものが本質ではなく、そこから得られる多くのデータを経営やサービス、製品の高機能化、低コスト化、製造技術の高度化、高効率化などに如何に活用していくかということが重要となります。

医療分野のオンライン化も急速に進んでおり、来年度には初診からのオンライン診療制度が恒久化されます。これは、大きな規制改革で、特に、慢性疾患患者には、継続的な健康状態の把握から診療、調剤処方まで一気通貫でオンライン診療が可能となるので、その恩恵は極めて大きいものがあります。電子処方箋も実現される方向になっています。この流れは、D to P with N、すなわち看護師が付き添う形でのオンライン診療に繋がります。これは、医師のオンライン指示により看護師が治療行為等を行うことになり、看護師の役割が大きくなります。本学で高度な看護学教育を受けて卒業される皆さんの活躍を大いに期待しています。

皆さんはいつか産業界や経済界、あるいは様々なコミュニティなどで、指導力を発揮しなければならない立場に立つことになります。リーダーは、先見性、俯瞰力、独創力をもって、日々的確な判断を下さなければなりません。加えて、リーダーには、異なる意見の人からも信頼される高潔な人格が求められます。常に自らを厳しく戒め、立場を超えて人の意見に十分耳を傾け、他者を理解する広い心を持つことが重要です。課題に真摯に向き合い、公平公正、説明責任の果たせる決断力、これがあってこそ、どのような厳しい決定に対しても組織の人達の理解と信頼を得ることができるのです。

卒業される皆さんが、それぞれの道で大成されることを心から願っています。卒業生と学生は大学の宝です。卒業生の活躍が本学の評価を高め、在学生の勉学へのモチベーションを向上させます。皆さんの肩には、兵庫県立大学の名誉と未来が掛かっています。

最後になりましたが、兵庫県立大学は、皆さんにいつまでも誇りに思っていただけるよう先進的な教育研究を展開し、皆さんが必要な時には、「学びの故郷」としていつでも戻ってこられる場となるよう努力を続けます。教職員一同いつも皆さんを待っています。

以上をもって式辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。

令和4年3月24日
兵庫県立大学 学長 太田 勲

 

カテゴリーメニュー

ピックアップコンテンツ

  • ケンダイツウシンサイトバナーリンク
  • 1460サイトバナーリンク
  • コロナ関連情報サイトバナーリンク
  • 研究者情報サイトバナーリンク
  • 教育情報サイトバナーリンク
  • 兵庫県立大学基金サイトバナーリンク
  • SDGsサイトバナーリンク
  • ダイバーシティ推進室サイトバナーリンク
  • Twitterサイトバナーリンク
  • Instagramサイトバナーリンク
  • YouTubeサイトバナーリンク

  • 兵庫県公立大学法人サイトリンクバナー
   
ページ先頭へ戻る