兵庫県立大学 環境人間学部・研究科

学部長・研究科長挨拶

 兵庫県立大学環境人間学部は、県立姫路短期大学の四年制大学への改組およびそれに伴う県立姫路工業大学との統合により、姫路工業大学環境人間学部として1998(平成10)年4月に開設されました。今年、開設23年目を迎えています。研究科は2002(平成14)年に博士前期課程(修士)、2004(平成16)年に同後期課程(博士)がスタートしました。
 本学部は人間学的視点を持ち環境問題一般に広く対応できる、環境問題のジェネラリストの養成をめざすことを目的として設立されました。現在、学部は「人間形成系」「国際文化系」「社会デザイン系」「環境デザイン系」、「食環境栄養課程」の5つの教育プログラム、研究科は「人間環境部門」「社会環境部門」「共生博物部門」の3部門に分かれて教育、研究指導が行われています。

 国宝姫路城(世界遺産)の北西に位置する本キャンパスの原点は、1923(大正12)年の旧制姫路高等学校の設立(1948(昭和23)年募集停止)に見いだすことができます。1926(大正15)年に建造された木造の本館(一部)と講堂(登録有形文化財)は現存しており、講演、授業等や同窓会(ゆりのき会)の各種活動の場として活用されています。本キャンパスは100年近くにわたり本地域における学び舎として存在していることになります。

 こうした歴史を有する本学部・研究科の卒業生・修了生は、県内外の一般企業、省庁の国家公務員、各種地方公務員、管理栄養士、建築士、教員、研究者等として幅広く活躍しています。実社会での卒業生の活躍は頼もしく誇りでもあります。これまでに学部においてはおよそ2,700名の卒業生(前身の姫路短期大学を含めると11,700名)、研究科では220名の修士学位授与者、そして30名を超える博士学位授与者を輩出しています。

 現代における人間社会をみると、孤立感、孤独感を有し、人間同士の交流を実感できない人が増えていると言われています。国際化は益々進展し、“Diversity & Inclusion”に対するなお一層の理解、共生社会の創造が求められています。これらの基盤として、持続可能で実際的な環境・空間づくりの実現、日々の健康生活の礎となる食や栄養に関する知識を持つ専門家の養成は急務と言えます。そして、人間社会の持続性には自然環境、生態系の保護が極めて重要になると考えられます。温暖化や温室効果ガス排出量等に対する議論が進む中で、欧州グリーンディールおよび循環型社会等の実現が模索されています。これらによって影響を受ける、または失われるものへの配慮を含めた公正な移行(Just Transition)、公正な変革が求められますが、東日本大震災において福島第一原発が及ぼした多大な影響を考えると、いかに自然環境、生態系の保護がそこに暮らす人々にとって大切になるかがわかります。いまだ故郷へ戻れない人々の状況を考えると胸が痛みます。豪雨や地震等の自然災害により、生活の場を一瞬にして奪われ、社会環境までも失ってしまった人々への対応も必要です。

 環境と人間の関係を考えた場合、両者は連動してお互いに影響を与え合っています。そのバランスは容易に崩れてしまう脆弱性を有していると言えます。人間ほど未熟に生まれる動物はいないと指摘されている中で、私たち大人は何よりも子どもの育ちを優先し大切にしてきました。この精神は時代が変われども、世代を超えて脈々と紡がれてきたと思われます。しかし近年、ごく一部の大人と思われますが、育児放棄や虐待を繰り返す事件が後を絶ちません。これは人間の内面におけるある種のバランスが崩れた結果だと考えられます。環境と人間の関係を考える上で忘れてはならないことは、正しい人間理解であり、その根底としての人間の倫理はいつの時代においても重視されなくてはなりません。

 現代社会における課題の解決を目指す上で、本学部ならびに研究科が担う役割は益々大きくなっていると思われます。

 多くの志を持った皆さんとともに、また本学の他学部・研究科と手を携えながら、より一層素晴らしい環境人間学部、環境人間学研究科を創造していければと思います。

               環境人間学部長 兼 環境人間学研究科長  内田 勇人