分裂酵母 (Schizosaccharomyces Pombe) とは
酵母といえばパンやビールを作るのに大切な生命体であることはご存知でしょう。この酵母を使った研究が盛んに行われています。しかも研究目的は食品や発酵だけではありません。酵母は私たちと同じ真核細胞であり、哺乳動物細胞にも共通する多くの分子が使われています。しかし、酵母は単細胞生物で,世代時間が短く,ゲノムサイズが小さいため,哺乳動物細胞では考えられない非常にパワフルな分子遺伝学的・機能ゲノム学的アプローチが可能です。このようなわけで酵母は生命科学の幅広い分野で、真核細胞の代表例として研究されています。
研究に用いられる酵母としては
出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)
分裂酵母(Schizosaccharomyces
pombe)
があります。分裂酵母はより動物細胞に近いとされており、この酵母を用いて様々な生命現象の分子レベルでの解明に取り組んでおります。また、分裂酵母は通常遺伝子が一倍体であることも特徴といえます。このため遺伝子に変異を導入すると酵母の形質(表現系)を容易に転換することが出来ます。目的の遺伝子の破壊実験が容易にに実施できるので、遺伝子の役割を容易に解明することが出来ます。
分裂酵母を使った研究
私たちの研究室ではこのような特徴のある分裂酵母をもちいて、環境ストレスに対して細胞が対応する仕組み(環境ストレス応答)を解析しています。この研究によって老化や疾患発症の分子機構が明らかになり、その発症予防に貢献できると考えています。具体的には
(1)酸化ストレスに対する分子機構の解析
(2)重金属などの環境ストレスに関する解析
に取り組んでいます。哺乳細胞では高度な技術と多くの費用がかかる遺伝子破壊実験が簡単に行え、毎週新しい研究成果を得ることも夢ではありません。