まずは受賞されたみなさんに、心よりお祝い申し上げます、おめでとう。みなさんが常日頃、学修やクラブ、ボランティア活動に注がれてきたたゆまぬ努力に対し、改めて敬意を表します。
みなさんのすぐれた成果はまた、みなさんの活動を温かく見守り後押ししてくださっているご家族や友人、地域の人たちの献身によって支えられていることを、感謝の気持ちを込め心に留めておいてください。
さて、人知を凌駕しつつあるAI、数え切れない犠牲者を生み出し続けている戦争、そして沸騰する地球。不確実性と予測不能な時代において、私たちは今日、大きな困難に直面しています。
9月25日、ニューヨークで国連総会が開催されていた先週の金曜日に、トランプ政権が脱退を表明しているUNESCOのパリ本部を訪れたローマ教皇レオ14世は、世界に向け平和と人間の尊厳について、次のように語りかけました。
科学的進歩が知恵から切り離されると破壊の武器へと変貌し得ること、文化がイデオロギーに支配されると虚偽やプロパガンダへと堕落し得ること、そして教育が真実を放棄すると良心を操るための道具となり得ることを、私たちは認識するに至った。
教育、科学、文化の分野に携わる者たちは、私たちの自由の美しさが輝きを放つように、あらゆる人を慈しむように、求められている。真実がなければ、言語は暴力の論理や権力者の恣意的な意志に支配されてしまう。
違いが必ずしも脅威ではないという信頼、誠実な対話こそが、個人が単独で達成できるものよりも、大きな善をもたらし得るという信頼を醸成することが、私たちの緊要の課題である。
教皇は30分に及ぶメッセージのなかで、私たちにこのような警鐘を鳴らしました。
さて現在、本学に在籍する学部生・大学院生の総数は約6,700名を数えますが、みなさんはそのなかでベスト・アンド・ブライテストとよばれる存在です。
ちなみにベスト・アンド・ブライテストという表現が人口に膾炙するようになったのは、1972年にニューヨーク・タイムズの記者デイヴィッド・ハルバースタムにより同名の著作が出版され、世界中で多くの読者を得たことに由来します。
本の内容は、「最良の、最も聡明なはずの人々」が、いかにして政策を過ち、アメリカ合衆国を300万の死者を出すベトナム戦争の泥沼に引きずりこんでいったのかを、克明に描いたドキュメンタリーでした。彼らは死者数という数値で示せるデータに固執し、測定が難しい愛国心や反戦感情といった定性的な要素や、物事の全体像を見失うことで、重大な判断ミスを犯すことになりました。
私たち世界が抱える数え切れない課題、私たち人間が招いた危機に対し、本学のベスト・アンド・ブライテストであるみなさんが、国境を越える多くの仲間とともに叡智を結集し、手をたずさえ立ち向かってくれることを願っています。
研究や社会活動において、これからも批判的思考と創造的思考をいっそう研ぎすまし、謙虚で誠実な対話を重ねながら、「私たちの自由の美しさが輝きを放つ」社会の実現を目指し、先頭に立って進んでください。
心とからだの健康を第一に、これからもそれぞれの多彩な夢の実現に向かって、時には立ち止まってみる余裕を持つ持続可能なペースで、成果と同様にそれにいたる過程も大切にしながら、柔らかでひたむきな努力を重ねてください。
最後に、受賞されたみなさん一人ひとりを心より祝福し、私からの慶賀のことばとします。
2026年9月30日
兵庫県立大学学長
高坂 誠
