本研究所を構成する5つの系が兵庫県内の5つの地域において、生物多様性の保全の推進、恐竜をはじめとする化石生物の多様性の解明、コウノトリ再導入個体にもとづく野外個体群の形成、ヒトの居住域における緑環境の創出、野生動物の適性管理、そして高精度で天体を観測することなど、実践的な研究を進めています。大学教員が県立の社会教育施設や研究機関の研究員を併任するというユニークな人員配置により、高い専門性を有するスタッフが社会の様々な課題解決に貢献しつつ教育研究の質を向上させてゆくという、新しい組織のモデル構築を目指しています。
系の紹介
自然環境系
県立人自然の博物館を拠点に、5つの部門(地球科学、系統分類、生態、環境計画、生物資源)に分かれ、調査・研究を進めています。教員の多くが博物館の研究員を兼務しているほか、市民協働型の調査・研究や調査結果の社会実装などを積極的に行っています。長い時間をかけて、多様な人と自然の関係性を築き上げたひょうご五国をフィールドに、「自然環境と居住環境」「自然・自然資源の評価と保全」「人間活動の自然環境に対する影響」「地域振興と地域資源の活用」など、様々なテーマで調査・研究を行っています。
森林動物系
兵庫県森林動物研究センターは、野生動物による被害を防ぎ、人間との共存を図るために2007年に開設された兵庫県の機関であり、森林動物系は本センターを拠点に調査・研究を進めています。「獣害に強い集落づくり支援」「イノシシの被害防止と狩猟資源の適正管理」など、テーマも多様です。センターには、研究所の教員である研究員とともに、兵庫県の行政職員であり、野生動物対策の普及員である森林動物専門員が配属されており、これらの人が連携して活動することにより、ワイルドライフ・マネジメントの推進に必要なデータの収集・分析、政策提言を行っています。
宇宙天文系
宇宙天文系は西はりま天文台を拠点として、宇宙の観測的研究を進めています。西はりま天文台にある「なゆた望遠鏡」は、日本で二番目に大きな光学赤外望遠鏡であり、公開望遠鏡として世界最大の望遠鏡です。学生自らが自在に望遠鏡を動かして、惑星・恒星・銀河を観測することができます。また、高校生や大学生の天文実習を受け入れたり、一般の方向けに観望会を開いたりして、市民が気軽に天文に親しむ場を提供しています。さらに、西はりま天文台は、天文分野(宇宙線、太陽・惑星分野を除く)では全国初となる、文部科学省の共同利用・共同研究拠点に認定されており、国内の大学との共同研究も積極的に行っています。
地域資源マネジメント系
地域資源マネジメント系は、豊岡市にあるコウノトリの郷公園を拠点に、2014年に開学した本学の地域資源マネジメント研究科を母体とし設置されました。地球科学・生態学・人文科学という3つの学問分野を基盤としながら、地域の自然・社会・文化の関係性を構造的に解明し可視化する「人と自然に関する高度な教養」を取り扱う地域資源マネジメント学を切り拓くことを目的に活動を行っています。自然科学、人文社会科学の双方の基礎的理解の習得のみならず、フィールドワークを通して、地域社会の再生を担う人材を育成しています。
景観園芸系
2009年に、淡路景観園芸学校を拠点に、全国初の環境・造園系専門職大学院として開学した緑環境景観マネジメント研究科が母体となり、景観園芸系は設置されました。「緑環境」「景観」という言葉が持つ真の意味と役割に則ったプログラムを組み、その土地と周囲の環境全体の生態系まで考慮に入れた本質的な課題解決能力を養います。また、実務実践のある実務家教員と研究系教員のサポートにより、基礎から実践まで幅広く学ぶことができます。卒業後の希望進路で即戦力として活躍できるように、理論を実践につなげる数多くの演習を用意しています。