VOCの気体分子は固体にどう取り込まれるのか
―分子性結晶の大きさによって相転移・再結晶・潮解という異なる挙動を示すことを実証―
発表内容要旨
シリカゲル表面への水蒸気の吸着や、塩化カルシウムが水蒸気を吸収して水溶液となる潮解は、乾燥剤の機能を支える代表的な現象である。このような固体による気体分子の吸着・吸収は、基礎科学から材料応用に至る幅広い分野で重要である。一方、固体が気体分子を取り込む過程で生じる相転移や再結晶、潮解などの多様な変化を系統的に捉えた研究例は限られている。
東京大学生産技術研究所の石井和之教授、兵庫県立大学大学院理学研究科の阿部正明教授らの研究グループは、共焦点レーザー顕微鏡と単結晶X線構造解析を併用し、発光性レニウム(I)錯体の結晶が、揮発性有機化合物(VOC)の一種であるクロロホルムの蒸気を取り込む過程を微小領域において系統的に追跡した。大きさが50マイクロメートル以上の結晶では、1万個以上のレニウム錯体分子が協同的に振る舞い、特定の結晶軸に沿ってクロロホルム分子を取り込む様子を観測することに成功した。また、クロロホルム分子を取り込む前の領域と取り込んだ後の領域との境界に、中間状態が存在することも明らかにした。
加えて、大きさが2~10マイクロメートルの結晶では、クロロホルム分子を取り込みながら再結晶が進行した。さらに、2マイクロメートル以下の結晶では、クロロホルム分子の取り込みによって結晶が液体へと変化する「有機潮解」が起こることを実証した。こうした結晶サイズに依存する現象は、結晶の体積に対する表面積の比率によって説明された。
本研究の成果は、「気体分子は固体にどのように取り込まれるのか」という根本的な問いに重要な知見を与えるとともに、VOCセンシング材料の開発への貢献が期待される。
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