超高速に起こる磁石の変化をより確実に見極める解析手法を開発
―統計学を活用し、実験結果から物理現象を客観的に識別―
磁石(強磁性体)に超短パルスレーザーを照射すると、磁化が極めて短い時間で減少する「超高速消磁」が起こります。この現象は、高速かつ省エネルギーな磁気デバイスを実現するための基礎技術として注目されています。一方、超高速消磁の実験データから、物理現象としての消磁が一つの過程で進むのか、異なる時間スケールをもつ複数の過程が関与するのかを判断する際には、研究者の経験や解析結果の見た目に依存するという問題がありました。
兵庫県立大学大学院理学研究科の和達大樹教授と量子科学技術研究開発機構関西光量子科学研究所の上野哲朗主幹研究員の研究グループは、本研究において、超高速消磁の代表的な二つのモデルを統計学的に比較し、どちらの物理モデルが実験データにより強く支持されるかを数値で評価する解析手法を開発しました。人工的に作成したデータと実際の実験データの双方を用いて検証した結果、異なる超高速消磁モデルを定量的に識別できることを示しました。さらに、実験の時間分解能やノイズの大きさに応じて、モデル選択の信頼性がどのように変化するかも評価できることを明らかにしました。
本手法により、実験条件や解析方法によって生じる見掛け上の違いと、本質的な物理現象の違いを区別しやすくなり、超高速磁化ダイナミクスの理解がより定量的に進むことが期待されます。また研究者は実験前に必要な時間分解能や信号精度の目安を検討することが可能になるため、効率的に実験を実施することができます。本手法は磁石のような磁性材料に限らず、放射光科学や量子材料研究で得られる計測データなど、複数の物理モデルを精密な計測データから見分ける必要がある幅広い研究分野への展開が期待されます。
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