■ 起業家精神向上のカギは探索行動とリーダー経験 ■
学生のアントレプレナーシップを高める要因を実証
~ リスク志向性、探索行動、終身雇用志向およびリーダー経験が影響 ~
兵庫県立大学国際商経学部のSaddam Khalid(ハリド・サダム)准教授、関西大学商学部の細見正樹准教授、京都大学経営管理大学院の関口倫紀教授らのグループは、学生のアントレプレナーシップ(起業家精神)向上に結びつく要因とそのプロセスを明らかにしました。本研究では、リスク志向性(リスクを積極的に取る度合い)、起業関連の探索行動、終身雇用志向およびリーダー経験が、起業の意図向上に関連することを実証しました。探索やリーダーの経験を促すことが、学生のアントレプレナーシップ向上につながることを示しています。
研究背景
起業活動が盛んになると、社会が活性化して日本全体の競争力向上につながるため、アントレプレナーシップ(起業家精神)を育成させることが求められています。特に、日本において、起業家を望ましい選択としている人の割合や、起業しようという意図については、諸外国と比べてかなり低い状況です。(GEM(Global Entrepreneurship Monitor )の調査)。これは、新卒一括採用や大企業志向により、起業をキャリアとして選択しないことも影響しています。このため、若年者の起業する意図がどのように高まるかについて、研究することが必要となります。
本研究では直接起業に役立つ学習ではなく、探索行動に注目しました。これは、偶然の出会いが学習やキャリアに結び付くというクロンボルツの偶発的学習理論をもとにしています。また、リスク志向性(リスクをどの程度好むかという度合い)や、終身雇用志向といった日本的な要素もアントレプレナーシップ向上に関連すると予想しました。
研究成果
大学生に質問紙調査を実施し、分析の結果、図 1 の結果が実証されました。
- リスクを積極的にとる学生は、終身雇用志向が低くなり、起業する意図が高くなる。
- リスクを積極的にとる学生は、起業に関連する探索行動に取り組み、起業する意図が高まる。
- リーダーの経験が多いと、リスクを積極的に取る人は起業関連の探索行動に、より取り組む。
- リーダーの経験が多いと、起業に関連する探索行動によって起業する意図が、より高まる。
実社会への応用(今後への期待)
- 起業教育において、直接的に起業に役立つ講義科目だけでなく、起業に関連する課外活動を行うことも、起業する意図の向上に役立つ。
- 学内外においてリーダーの経験を積むことが、起業する意図の向上に結びつく。
論文情報
- タイトル
Planned Happenstance and Entrepreneurship Development: The Case of Japanese Undergraduate Students
(計画された偶発性と起業家精神の涵養:日本の大学生の事例) - 著者名
Saddam Khalid (ハリド・サダム)(兵庫県立大学国際商経学部 准教授)
細見 正樹 (関西大学商学部 准教授)
関口 倫紀 (京都大学経営管理大学院 教授) - 雑誌・号・doi
Administrative Sciences 14巻2号 - リンク
https://www.mdpi.com/2076-3387/14/2/27
問い合わせ先
【本件に関するお問い合わせ先】
兵庫県立大学国際商経学部 准教授 Saddam Khalid(ハリド・サダム)
E-mail:k913s019@gk.u-hyogo.ac.jp
【取材に関するお問い合わせ先】
兵庫県立大学 神戸商科キャンパス 学務課
TEL: 078-794- 5196