Circulation

#自然 #環境 #サスティナブル #地球 #炭素 #還る

私たちが当たり前のように消費している資源やエネルギーは有限であり、持続可能性が課題です。そこで重要になるのがサーキュラーエコノミー(循環経済)の考え方です。限りある資源の循環利用、エネルギーの効率的な生成と再利用、そして環境に優しい新素材開発など、サステイナブルな社会の実現に向けた兵庫県立大学の研究の最前線をご紹介します。

 

炭素からたどる、生態系の循環

大橋 瑞江教授

環境人間学部 所属(研究者情報はこちら

森林を中心とした生態系における物質循環の解明に取り組んでいます。中でも森林の炭素循環に注目しており、樹木の幹の肥大成長や落葉のタイミング・量、根の発達など、森林内で生じるさまざまな現象を計測し、炭素動態として評価します。

特に重視している研究手法は、実際に森林に出かけ、樹木や落葉の状態を直接確認するフィールドワークです。自然の中で起こる現象を自分の目で確かめ、計測データを解析することで、理論だけでは得られない生態系の実態を明らかにできます。加えて、森林の土や水に含まれる水溶性有機物を、高性能な質量分析計(FT-ICR MS)を用いて分子レベルで詳細に解析すれば、時間とともに変化する物質循環の微細な仕組みも理解できます。

本研究の醍醐味は、自然界で行われている微細な物々交換やエネルギーの流れを、一つずつ丹念に追いかけていくことにあります。地道な作業ですが、現場での計測と分子レベルでの解析が結びつき、仮説通りの結果が得られたときの達成感は格別です。森林は日本の国土の約7割を占めており、種類や気候・地形のバリエーションが豊富です。その複雑な生態系を理解することは、学術的にも非常に価値のある挑戦です。

私たちの生活は、森林が提供する生態系サービスに支えられています。二酸化炭素の吸収による温暖化緩和、水を浄化する「緑のダム」機能、土砂災害の防止など、その恩恵は計り知れません。本研究によって、これらの森林の機能を科学的に可視化できるのです。得られた知見は、地域の森林保全計画や行政の環境政策の糸口となるだけでなく、気候変動対策や世界の水資源管理といったグローバルな課題解決にも応用できる可能性を秘めています。

今後は、論文発表と共に、一般の方に向けた講演会や書籍出版などを通じて、専門的な知識を社会に還元していきたいと考えています。森林生態学の重要性と面白さをより多くの人々に伝え、持続可能な未来を築くための第一歩としたいです。

拡大する研究

アモルファス合金から挑む、次世代触媒材料の創出

野﨑 安衣准教授

工学研究科所属(研究者情報はこちら

私たちが日常的に消費している資源やエネルギーは有限であり、その持続可能な利用が大きな課題となっています。こうした課題に対する解決策の一つが、資源を循環させながら有効に活用するサーキュラーエコノミー(循環経済)の考え方。私の研究では、この理念に材料科学の立場から貢献することを目指し、環境浄化やエネルギー利用に役立つ高性能な触媒材料の開発に取り組んでいます。

研究の特徴は、アモルファス合金を出発原料として用いている点にあります。アモルファス合金は、原子が規則正しく並んだ結晶構造をもたず、ガラスのように不規則な構造を持つ金属材料。この特異な原子配列に着目し、脱合金法と呼ばれる手法を組み合わせることで、非常に微細で表面積の大きな多孔質構造体(目に見えないほど小さな穴が無数にあいたスポンジのような構造をもつ)の作製に成功しました。脱合金法とは、合金中の特定の金属成分だけを選択的に除去し、残った部分に無数の孔を形成させる技術です。

こうして得られた多孔質構造体は、化学反応を助ける「触媒」を支える触媒担体として優れた性能を示しました。表面積が大きいことで反応の場が増え、有毒ガスの分解や水素生成反応において、これまでの材料を上回る高い触媒活性が確認されています。有毒ガスの分解は大気汚染の抑制につながり、水素の効率的な生成は脱炭素社会の実現に向けた重要な技術です。また、高価な貴金属に頼らず、比較的安価で豊富な金属を活用できる点も、資源循環の観点から大きな意義があります。

原子レベルの構造設計が、社会課題の解決に直結する機能を生み出す。その面白さと可能性が、この研究の原動力です。今後は構造や組成の精密制御を進め、環境・エネルギー・資源リサイクル分野で実用的に活躍する材料へと発展させることを目指しています。

研究のようす

研究のようす

注目の人 -Person-

森の秘密を分子レベルで解き明かす

私は、森林の土壌や水に含まれる有機物を分子レベルで分析し、その循環の仕組みを解明しています。サンプル採取では不純物を混入させないよう細心の注意が求められますが、期待していた通りの結果が得られたときの達成感は格別です。この分析により森林の二酸化炭素吸収量や水浄化能力を数値化できれば、地球温暖化対策ならびに水資源保全に活かすことができるでしょう。将来の目標は、研究を通して自然の価値を社会に発信し、森林保全に貢献することです。

森の秘密を分子レベルで解き明かす

堀内 夏海さん

環境人間学部4

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