Local & Traditional Culture

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郷土文化は、長い歴史の中で、その土地に住む人々が築いてきた知恵や技術、生活の集大成です。様々な文化財や伝統産業、古くから伝わる祭りや神話など、現在も色濃く残る地域特有の風習や文化は、人々の暮らしを豊かに彩っています。地域の歴史や文化を未来へ繋ぐため、兵庫県立大学が取り組む研究をご紹介します。

 

文化人類学から見る、祭りの伝統と文化

タマシ カルメン教授

国際商経学部所属(研究者情報はこちら

日本の祭りや伝統文化、神話等について研究しており、現在は、大阪天満宮で行われる天神祭について、文化人類学的視点から分析を行っています。天神祭は、日本三大祭りの一つとして知られ、1000年以上の歴史を持つ伝統的な行事です。祭りの研究を通じて、歴史や伝統儀礼、宗教、地域文化など、日本の文化を総合的に学ぶことができます。また、祭りを通じて見える歴史や文化は、現代社会にも少なからず影響を与えており、過去を理解することは現代社会を理解するうえでも非常に重要です。

主な研究方法は文献調査とフィールドワーク。特にフィールドワークでは、天神祭を支える「鳳神輿講」という講社(祭りの奉仕組織)のコミュニティに参加し、インタビューや活動を通じて深く関わっています。

今後の研究では、天神祭と講社の歴史や文化、地域社会との結びつきをさらに深く探求し、この特殊な関係がどのように形成されたのかを分析していきます。過去の文化や伝統を学ぶことで、現代社会が直面している地域コミュニティの課題や、グローバル化の中での文化保存の重要性についても、新たな知見を得られることを期待しています。

また、研究において大切にしているのは、「目的にとらわれず、自分の純粋な興味を大切にする」という姿勢。これは恩師からの教えでもあり、私自身も後世の研究者に伝えたい考え方です。文化人類学は短期間で直接的な社会的成果が得られにくい分野ですが、例えば、天神祭の研究を通じて、記録を残し、文化や伝統の継承に寄与できると信じています。さらに、祭りの表面的な賑やかさや派手さだけでなく、その背景にある深い歴史や文化を国内外に伝えることで、正しい日本文化の理解促進につながる可能性もあります。これからも自身の興味を原動力に、社会に役立つ成果を信じて研究を続けていきます。

拡大する研究

地域の歴史や文化の価値を見出し、未来へ紡ぐ

中井 淳史教授

地域資源マネジメント研究科所属(研究者情報はこちら

歴史考古学がもともとの専門ですが、現在は考古学にかぎらず但馬地域の歴史文化遺産について広く研究しています。地中からみつかったものばかりでなく、地元の人々が大事に守り伝えてきたものも研究材料です。伝統産業である出石焼や、古くから地域の人と共生してきたコウノトリにまつわる文献、当時の人々の生活を記した書物の分析など、幅広い手法で歴史の解明を進めています。研究の使命は、人々が大事に守ってきたものを地域資源として再生させ、歴史や文化を未来へつなぐこと。あらためて自分たちの歴史をみつめなおすことが、地域資源化や地域活性化の第一歩になると信じています。研究を通じて、そうしたお手伝いをしたいと考えています。


歴史を守り、技術で繋ぐ文化財調査の挑戦

永瀬 丈嗣教授

工学研究科所属(研究者情報はこちら

電子顕微鏡の専門家として、豊岡市出石町の辰鼓楼(機械時計)の科学調査プロジェクトを推進中。プロジェクト開始当初は、金属の調査を通じて製造地を特定することが目的でしたが、現在では歴史的価値の解明と後世への継承も目指しています。このプロジェクトは、通常の工業製品調査とは異なり文化財の調査であるため、工学的アプローチに加えて歴史的背景の理解が不可欠です。様々な分野の研究者と共同で調査委員会を立ち上げ、様々な地域の方々とも協働しながら市民参加型の調査を進めています。さらに、遠隔電子顕微鏡法や3Dプリンター・デジタルツインなどの最新技術を用い、兵庫県内外の専門家・市民が同時に調査できる新たな挑戦も計画中。文化財分析手法を確立し、辰鼓楼の価値を高めることが目標です。今後も地域と協力し、貴重な文化財を後世に繋げる調査を続けます。

注目の人 -Person-

ビジネス志向の社会における文化の保護

子どもの頃から日本文化に関心を持っており、兵庫県立大学に進学しました。大学で経済について学ぶ中で、経済発展における文化や伝統の重要性を強く考えるようになり、現在は日本の伝統文化と経済の関係、特に神前婚が経済に与える影響を研究中。母国のルーマニアでは、経済の発展とともに国際化が進むことは良いことである反面、自国の文化やアイデンティティが薄れてしまう恐れもあると肌で感じました。今後は、伝統を守りながら経済的に豊かになる方法を追求していくつもりです。

ビジネス志向の社会における文化の保護

カルヤン テオドラさん

国際商経学部 4年

播磨の瓦の価値を広めるため、考古学の観点から歴史を紐解く

私は姫路市で文化財専門職員として働きながら、大学院で播磨地域をフィールドに瓦の歴史研究を進めています。瓦を調べることで、当時の職人が用いた技法や癖、その地域特有の特徴を知ることが可能です。技術が伝播した歴史や文化の影響を読み取り、発表することで、播磨の瓦のブランド力向上につなげたいと考えています。また、研究成果の発表を通じて、地域の人をはじめとする多くの人に、播磨の瓦の技術的・歴史的価値を知ってもらい、地元の産業振興や技術の担い手の確保にも貢献できれば幸いです。

播磨の瓦の価値を広めるため、考古学の観点から歴史を紐解く

山下 大輝さん

地域資源マネジメント研究科 博士後期課程1年

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