食品ポリフェノールによる疾病予防

植物に豊富に含まれているポリフェノールを食べると

疾病の予防に役立ちます

ポリフェノールは栄養はあるのでしょうか? 厳密な意味ではNOです。では、食べる意味はないのでしょうか? その答えはNOです。食べる意味は充分にあります。では何故?

例えば心臓血管病などにおいて、ポリフェノールなどを豊富に含む食品を食べた方が病気にかかりにくいという報告が昔からあります。ポリフェノールは食べてから素早く代謝されますが、吸収されて体内を巡ります。このときに健康に役立つ生理活性を発揮していると考えられます。

動脈硬化を防ぐことは、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、等々を予防するために重要です。この動脈硬化をポリフェノールが予防しているのではないかと考えられてきています。これは動脈硬化は低密度リポ蛋白質の酸化により誘導されるという考えがあるためです。

ポリフェノール類は抗酸化といって脂質の酸化を防ぐ働きを持っています。このため、動脈硬化を抑制しているという考えが出来ます。最近では、ポリフェノール類は脂質の酸化だけではなく、酵素阻害、酵素誘導、遺伝子誘導など様々な活性を示しているのではないかと考えられています。

我が研究室では、ポリフェノール類の酵素阻害活性に着目しています。酵素としては、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)をターゲットとして考えています。

共同研究体制

他大学との共同

研究の進行状況

ミエロペルオキシダーゼMPOの阻害作用を測るためには、その活性測定が必要です。この活性測定法の一つは名古屋大学、食品総合研究所等との共同研究を経て、我が研究室で開発されました(2003年に報告)。この手法により、ポリフェノール類が阻害活性を高く持っていることを明らかにしています。

2008年には、徳島大学との共同研究により、ケルセチン代謝物によるMPO阻害について詳細な研究が報告されました。これには上記した活性測定法、免疫組織染色やin silico研究(コンピューターを用いた相互作用の研究)が使われています。

ポリフェノールは直接吸収されるよりも、代謝物として体内に入ります。これは、毒物が直接体内に吸収されるのを防ぐ働きもあると考えられます。生体にとっては、ポリフェノールは異物なので、そのような対応が生じます。では、どのような機構で代謝が進むのか? → これについては島根大学との共同によりCaco-2やヒト血漿を用いた研究が進めてきました。我が研究室では質量分析器を使い、代謝物プロファイルを明らかにしていきます。

今後の研究の方向

阻害機構の証明:自殺基質としての働き、など

今後、何を研究するのか?

MPOの阻害については、2で一部述べましたが、MPOとポリフェノールの相互作用(活性部位への弱い結合)が関与していると明らかになりました。しかし、それが全ての阻害を説明できるかはまだわかりません。そこで、さらに阻害機構について明らかにしていきます。

興味深い報告として、セロトニン含有フェノール性物質が抗動脈硬化作用を示している、というものがあります。セロトニンはMPOのよい基質です。MPOによるセロトニン酸化の反応についてはニュージーランドのCentre for Redox Biology and Medicineのトニーケトル博士の指導のもと、在外研究(研究留学)により解明してきました。

MPOについては、様々な観点から研究を進めています。乞うご期待。