【特別フィールドワーク】ため池アクション
「お米を“作る人”と“つなぐ人”」
お米クラブと米農家さんへのインタビューから見えた、米作りの現場とその思い。

先輩学生と米農家さんに聞いてみた!
お米クラブの活動から見る、米農家と地域のつながり
学生が地域に良い影響を与える方法を知りたい!
私達(環境人間学部1回生4名)は農村、特に米作りについて興味があります。米不足が深刻化しているなか、大学生が地域とどのような活動をおこなっているのかを知るため、以下のプロジェクトに取り組む先輩学生や農家の方にインタビューさせていただきました(2025年12月実施)。
着目するプロジェクト
学生と地域の協働プログラム「ため池アクション」 ~お米クラブを作ろう~
農業・農村が抱える課題に関して、学生3人程のチームを組み、地域住民、専門家、ファシリテーターと共に6ヶ月間(5~10月)で1つのテーマに取り組む授業「ため池アクション」。
宏樹さんと学生は、「みんなでお米を作る『お米クラブ』を作ろう!」をテーマに活動をおこなってきました。かつて米づくりは家族一丸の行事でした。機械化が進んだ現代でも、忙しい時期だけ親戚がお手伝いをする代わりにお米を分けてもらう文化は続いているところもあります。このような取り組みを、家族でなくてもできないか?をチャレンジする取り組みです。
インタビュー対象者

学生 Hさん 環境デザイン系4回⽣
ため池みらい研究所インターン生として「お米クラブを作ろう!」をサポート。姫路市在住。ゼミでは森林生態系について研究をしている。好奇心旺盛で様々なことにチャレンジしている。趣味は旅行で留学経験もある。

大竹 宏樹さんひろき農園 代表
稲美町出身・在住。退職を機に本格的に農業に取り組む。お米や多品種の野菜を栽培。「ため池アクション」にて学生と「お米クラブ」を設立。その他、地域の草刈り問題を解決する「稲美畦師」も設立。
実践フィールド:稲美町草谷地区について
稲美町草谷は兵庫県の中南部に位置する。草谷は自然が豊かで田園風景が広がっており、周囲には小川や池などがあり地域住民の安らぎの場となっている。地元のコミュニティ活動が活発で、様々なイベントが開催されている。草谷側沿いにはシバザクラが両岸約250メートルにわたって定植されており、地域の新たな名所になりつつある。参考:加古川経済新聞
Q.農業を始めたきっかけを教えてください。
ひろきさん:農家としては3代目で、自分の父が亡くなるまでは農業にいいイメージがなく、父に言われたことをやる、という感じでした。39歳までは食品会社に勤めていましたが、農協の買取価格などのシステムに疑問を持ち、米のコンテストを開催すれば、もっと米が売れるんじゃないかと思い、やってみようと思いました。
しかし、お米は付加価値が付きにくいのでなかなか苦労しましたね。なので、兵庫県ではあまり育てられていない「にこまる」という品種を育てることで価値がついてきた感じがあります。

学生とひろきさんのかかわりの様子
Q.農作業の中で1番好きな作業と大変な作業を教えてください。
ひろきさん:1番好きな作業は、やっぱり収穫ですね。これは農業でも漁業でも同じだと思いますが、収穫の瞬間はやっぱり楽しいです。今年の収穫量がどれくらいになりそうか、最後の田んぼの稲刈りが終わった時は達成感・充実感を感じます。
反対に、1番大変なのは夏場の草刈りです。それに加えて、機械が故障したり、思わぬトラブルが起こったりすると本当に大変ですね。
Q.学生と関わりを持つことで良かった点はありますか。
ひろきさん:今までは米作りで大変な作業も家族数人だけで行っていたので、体力的にしんどく、最後は会話も少なくなっていましたが、学生さんが手伝ってくれることで余裕ができ、非常に和気あいあいと作業ができました。
私たちが学生と作業をしているところを、よく周りの農家さんが見ておられたので、やはり他の方も学生さんに手伝ってほしいと感じているはずです。将来的にはこの地域全体で学生さんと関わり、活気ある地域になればと思います。また学生さんが地域のイベントに参加してくれたときは、地元の方が学生さんとの交流を非常に楽しんでくださり、とても助かりました。

ため池アクション参加学生やHさん、ひろきさんと集合写真を撮りました!
Q.農業の機械化が進んでいると思うのですが、機械を導入することが難しい作業や、最も大変だと感じる事はありますか。
ひろきさん:1番は機械の選定が大変、難しいです。過剰なスペックがあっても値段が高いだけでも無駄になりますし、経営規模や自分が今後何年農業をするかでどのレベルの機械を買うかは変わってくるので、兼ね合いが難しいと感じます。
最近はドローンが注目されていますが、農家が免許を取ってやろうとするのはなかなか難しいです。最先端の技術を取り入れるためには膨大なお金が必要になってくるので、個人的には必要でないと思いますね。
Q.農業を継続する上で最も大切だと思うことは何ですか。
ひろきさん:やりがいをどう見つけるかですね。やっぱり、新米が取れてお客さんに渡したときに美味しいね、って言ってもらうことがやりがい、というかそれしかないので、大切にしています。
あとは、食べ物を作っているので、安全でおいしいお米を毎年安定的に提供していくことが重要だと考えています。
Q.米作りと地域の「いい関係」とはどのようなものだと思いますか。
ひろきさん:「にこまる」のようなお米を地域でブランド化するのがいいんじゃないかと個人的には考えています。それをすることで稲美町全体の盛り上がりにもつながると考えています。稲美町という地域からだんだん増えていけばいいですね。
Q.実際に農業をする中で一番問題だと感じることは何ですか。
ひろきさん:私ももう62歳になり、子どもは娘が2人なので、後継者問題が心配です。農業を引き継いでもらえるかどうかは、やはり農業でしっかり収入が得られるかが大きなポイントだと思います。
ただ、血縁関係にこだわる必要はないとも感じています。農業に興味を持ち、信頼関係を築けて、本気でやる気のある人であれば、農機具を提供して引き継いでもらうのもありだと思っています。不確定な人に任せるより、意欲のある方に継いでもらえたほうが、私自身もうれしいですね。

ひろきさん宅でのインタビューの様子
Q.世代の違う方向士で交流する中で良かった点と難しかった点を教えてください。
学生Hさん:世代が違うことで考え方に違いがあり、新しい発見や知らなかったことを知ることができて面白いと感じました。また、先生が仲介役をしてくださるので話しやすく、さまざまな世代や地域の方々と交流できることがとても良い点だと思います。
一方で、学生と地域の方々の考え方の違いが問題になることもありました。アクションは半年以内に達成しなければならないため、地域の方々の考えを尊重したい気持ちがあり、地域側に合わせるのですが、時間的な制約もあり難しい部分もありました。
ひろきさん:良かったことは様々な世代の人と繋がりが生まれる事です。その繋がりが2年目、3年目と大きくなっていくことで活動の幅を広げていきたいと思います。

ひろきさん宅でいただいた絶品の焼き芋。その他 ぜんざいも出していただきました!
Q.このプロジェクトの目的や概要を教えてください。
学生Hさん:農村では人手が足りておらず、外部の人が入って作業することによってお米農家さんも助かるし、お米作りに興味がある人たちにとっても利益があるんじゃないかと思ってお米クラブを作ることになりました。ただ体験することを目的とするのではなく、機械に乗って作業するなど、本格的にお米の生産に関わることを目的としています。
Q.米作りについて知るためなら体験だけでもいいのに、なぜ生産に貢献することを目的としているのですか。
学生Hさん:お米を作りたいと思っている人に、実際の農家さんが行っている作業を行ってもらうことで、将来農家になる道もあるということを知ってもらうためです。
Q.人手不足などの問題解決の手助けをしたいと聞いたのですが、実際どのような方法で手助けができていると感じますか。
学生Hさん:私がお世話になっている地域は高齢者の方が多く、学生たちと話しているとすごく笑顔で楽しそうなので、学生が地域活動に行くことで地域を盛り上げることができていると感じます。今は学生が年に数回しか行かないため、継続的な人手不足解消ではないかもしれないですが、お米クラブとして活動が盛んになると、学生が変わったとしても地域と深く関われることができ、継続的な人手不足解消につながるかもしれないと思っています。
Q.実際に活動してみて分かった地域の問題点はありますか。
学生Hさん:たくさんありました。例えば、ため池や水路の管理などは、水利組織という農家さんが作った組織が管理しているのですが、その組織の事務(補助金の申請作業や資料作成など)を担う人材を確保しにくい、ということです。事務の作業は、パソコン・ソフトが必須になるなど高度化している一方、草谷地区では、それを適切に扱えて、事務を担える人がなかなか見つかりにくい、ということもわかりました。

先輩学生へのインタビューの様子。
優しくて素敵な先輩でした!
Q.農家さんと長期的に関わる上で何を大切にしていますか。
学生Hさん:ひろきさんがすごくおもてなしをしてくださる方で、それが自分にとってすごく嬉しいので、感謝の気持ちを忘れないようにすることを心がけています。
Q.お米クラブでは、地域が学生にとっての「居場所」となることを目指しているときいたのですが、具体的に教えていただきたいです。
学生Hさん:継続的に参加していると、ひろきさんやそれ以外の方にも顔を覚えていただけるので、それが居場所につながると思います。「また来てくれたね」と声をかけていただけるのが嬉しいしありがたいと感じます。なので、まずは継続的に参加しやすい仕組みづくりをしたいと考えています。

米作りの様子
Q.今後の展望はありますか?
学生Hさん:学生団体などを作って、完全に学生だけでお米作りをしてみたいです!
ひろきさん:国道や県道って結構草刈りがされていないんです。それは田んぼでも同じだと思っていて、うっそうとしている田んぼが一個でもあると印象が悪く、ごみが捨てられることもあると思うんです。このような問題を解決するために、シバザクラを植栽してきれいな風景を作る活動をしています。植栽している面積がだいぶ大きくなってきたので、芝桜を全面にアピールした、せんべいやクッキーなどの販売を通して、地域の活性化に繋げて行きたいですね。
あとは、生で食べられる落花生を作って、売るのではなく自分で抜きに来てもらうようなイベントをしてみたいと思い、絶賛計画中です。あともう一つ考えていることがあるんですが、今はまだ秘密なので、ぜひ楽しみにしていてください!
インタビューを終えて
今回初めてインタビューやフィールドワークを行い、多くの学びを得ました。事前に下調べをすることの重要性や、インタビューをする際の礼儀作法の難しさなどを実感することができたと思います。また、現地で活動しているHさんやひろきさんのお話を聞くことで、インターネットで調べるだけでは分からない貴重な意見を伺うことができました。お米の販売ルートや、機械の選定といった細かい部分を学ぶことができ、非常に良い経験ができたと思います。また、これまで持っていた農業へのイメージが変わるきっかけにもなりました。お話をするだけでなく、焼き芋やぜんざいを頂き、楽しい時間を過ごすことができたと思います。農業はこう、と固定した姿で捉えるのではなく、農家さん一人ひとりに取り組み方、こだわりが大きく異なることを知り、自分から知ろうとする積極的な姿勢が大切なんだと気づかされました。(環境人間学部1回生、4名)
2026年1月 作成
本記事は1回生向け授業「環境人間学ゼミナール~農業・農村のリアルを学ぼう~(担当:柴崎)」の一環で作成した。
