【山採りみらいグループ】
里山の現状と展望を徹底調査!

先輩学生と地域のプレイヤーに聞いてみた!
里山って何?? これからどうなっていくの?!?!
学生が里山に良い影響を与える方法を知りたい!
私達(環境人間学部1回生4名)は、学生と地域が連携し、里山の自然環境を保全する取り組みに興味があります。どのような考えのもと地域や里山にアプローチ行っているのか知りたいと考え、インタビューさせていただきました(2025年12月実施)。
着目するプロジェクト
学生団体「山採りみらいグループ」
かつて里山は農村での暮らしに欠かせないものでした。しかし今日の暮らしにおいて利用されなくなり、結果として多くの里山は荒廃しています。
学生団体「山採りみらいグループ」は、里山資源を現代の暮らしにあった形で活用し、里山の荒廃を防ぐ取り組みを実施しています。具体的な活動内容としては、山採りおよびその植物の販売、山採り植物を活用した庭づくり、里山の整備活動などがあります。
*山採り 里山に自生している幼木などを掘り取り、庭などの植栽として活用することを意味します。
インタビュー対象者

学生 Nさん 環境デザイン系4回⽣
山採りみらいグループに参加している学生。たつの市在住。趣味は旅行、弾き語り。現在は建築・住宅関係の会社への就職を目指し日々精進している。
実践フィールド:加古川市志方町広尾東
加古川市北部に位置する、農業が盛んで山と平野が混ざった自然豊かな地域。毎年秋には「しかた広尾東コスモスまつり」というイベントが開催される。この祭りは、広尾東の休耕田に多くのコスモスが咲き、花畑を楽しめる地域イベントとして知られている。また、志方町内には城跡などの歴史的な見どころもある。
Q.山採りみらいのプロジェクトに参加しようと決めたきっかけは何ですか。
学生Nさん:もともと園芸に興味があったのですが、大学に入学してから、庭師の西山さんと活動できる「山採りみらいグループ」を知って、1回生の時から参加しています。
Q.なぜこの活動に継続して参加しているのですか。信念やモチベーションなどはありますか。
学生Nさん:2回生の時に東播磨フィールドステーションという場所で、自分たちで山採りした植物で花壇づくりをしました。今までやってきたことがちゃんと完成した感じがあり嬉しかったこともあり、現在も参加しています。
学生が山採りした植物で作った花壇。幼木や背丈の低い草が植えられています。
Q.里山について、一番問題視していることは何ですか。また、それがどう活動に関係していますか。
学生Nさん:人間が里山に関わる機会が少なくなっていることです。管理というとめんどくさいとか、大変で「やらなくてはいけないもの」というイメージになってしまいます。けど、そこに価値を見出して、例えば売れるものがあるから、山に入って綺麗にして、自分らで使える分を採ってくるってなったら、「やらなくてはいけないこと」から1個のビジネスに置き換えることができる。そういうところが一番大事かなって思います。

山採りの様子。何だか難しそう。
Q.この活動を通して里山をどんな風にしていきたいですか。
学生Nさん:長期的な話にはなるけれど、活動が広がっていって、同じように使える里山を増やしていければいいなと。 今の活動場所も綺麗に整備して、地域の人やいろいろな人が遊びに訪れ、交流できるような場所にしたいです。
Q.どれくらいの頻度で活動を行っていますか。
学生Nさん:月に1回は山に行くっていうのは決めています。車を出さないといけない場所なので、それもちょっと大変だから月1回で。 ミーティングも隔週で月2回ほどしています。
Q.活動資金はどこから出ていますか。
学生Nさん:大学から助成をいただいたり、植物を販売した際の売上金を交通費などに使用したりしています。また2025年度は、外部資金の獲得にも取り組みました。加古川市の「協働のまちづくり推進事業補助金」に応募し、無事採択していただきました。初めて補助金の申請をしたのですが、申請書の作成やプレゼン、執行計画の作成や執行の管理など、貴重な経験になりました。
Q.里山の手入れは力仕事も多いと思うのですが、どのような工夫をされていますか。
学生Nさん:1人男性が外部で入ってくれており、その方にやってもらっています。私はちっちゃいの掘っています(笑)。サイズ的には1.5m〜2mほどで、細くて観葉植物になりそうなものです。
採った木々を運搬する様子
重そう!
小さい植物も山採りします。これだと力もあまりいらないそう。
枯れないように、木々を水につけている様子。
思ったよりも細い木を取り扱っててびっくり。
Q.活動全体で、大変だと感じること、反対に、やりがいや喜びを感じるのはどんなことですか。
学生Nさん:大変だったことは、植物が枯れてしまっていたことです。頑張って里山に行って植物を採ってきても、環境の変化や管理方法が分からず、最初の1年はほとんど枯れてしまっていたので、この時期は精神的にも一番しんどかったです。でも、採ってきた木がお店や家の植木や枝木として植えてもらったのを見せてもらうと、やりがいに繋がります。

学生が山採りした植物が活用された事例
写真:リビングソイル研究所提供
Q.里山の所有者など実際に地域の人と関わることも多いと思うのですが、そこで難しいと感じることはありましたか。
学生Nさん:実践フィールドの広尾東は「ため池アクション」などで学生を受け入れることも多く、学生に優しいというか、よくしてくれる方が多いです。私も地域のイベント(例えば、コスモス祭りなど)には参加するようにしていて、話す機会をとるようにしています。
広尾東での「ため池アクション」の様子
Q.今まで活動してきた中で、どれくらいの量の木を山から持ち帰ることができましたか。
学生Nさん:下草は60株ほど、幼木は20本くらい出したと思います。
Q.里山の手入れが不足していることの認知度はまだ少ないと思うのですが、広めるためにしていることはありますか。
学生Nさん:1年に1回、ため池みらい研究所が開催している交流会でポスター発表をしたりして、色々な人と意見交流をしています。交流会には、加古川市の農家さんや地域活動をしている大学生の他、研究者や市長さん、市議会議員さんも見に来ています。

ため池みらい研究所が開催した交流会の様子。様々な年代の人が参加している。
Q.この活動について、自分の将来につながっていることはなんだと思いますか。
学生Nさん:結局私は建築系の進路に進んで住宅メーカーに務めることになったんですけど、でも暮らしが豊かになるようなとか、自然とつながるようなみたいな理念で庭も大切にしているような会社に行きたいなとはずっと思っていたので、そのような職場への就職にはつながったかなと思います。
Q.大学生という視点から、地域に関する活動を続けていくうえで最も大切だと思うことは何ですか。
学生Nさん:コミュニケーション能力ではないでしょうか。でも、大人の会話ができるというよりかは、学生なんでその立場を理解して「初めて見ました、聞きました、知りました」とか「もっと教えてください!」て感じのほうがうまくなじめると思う。おじいちゃんおばあちゃんは学生が来てくれるだけでうれしそうなんで、にこやかにって感じがいいと思います。
Q.今後はどのような活動をしていこうと思っていますか。
学生Nさん:広尾東には、地域の方々がお茶したり会議したりする集会場があるんですけど、そこに庭を作って地域の人にお礼というか恩返しができたらいいなと思っています。この活動は雨天中止になることがめっちゃ多くて三か月くらい間空いちゃうみたいなこともあるんで、ぼちぼち進めていけたらなと思っています。
Q.現在の里山はどのような状況なのですか。
西山さん:里山っていうのは、基本的に昔から里の人達が使ってた場所です。必要なものを取ってたら、そういう形になりましたっていう場所なんだけど、今の生活で里山にあるもので欲しいものある?
一 一枝とか、別にほしくないっていうのが、結局今の里山問題の全てです。結局今の人は、里山の資源が必要ないので、なので、今まで放置だったんです。山に入る理由もないし、そこで経済価値は何も生まれないから。
薪を取ってましたみたいな時代が、50〜60年前まであって。その木が太く・大きくなって倒木の恐れがあるなど、日常の生活にも悪影響を及ぼしうるっていうのが、現代の里山の現状です。

西山さんへのインタビューの様子。その言葉に説得力を感じます。
Q.里山の管理はどういうところが大変ですか?
西山さん:採算が合わないんですよ。やりようはあると思うけど、手を打つタイミングはもう遅すぎるから。50年前からそういうことを考えて、維持しようという動きがあれば、管理をしてくれていたら、もっといい状態だったかもしれない。けれども何十年もほったらかされてる場所を今からってなると、すっごい大変です。

管理されず大きく育ちすぎた木。こういった木の伐採はプロにしかできず、その分費用もかさむ。
Q.なぜ里山の整備は難しいのですか。
西山さん:お金がかかる。一区画でもすごい額なんですよ。プロにやってもらうとなると。じゃあ地域住民でやる、となっても難しい。
自分の家の庭や近所の公園の整備すらできないのに、その先の里山整備なんか遥か彼方の話なんですよ。じゃあやっぱりプロにやってもらうしかない。でも財源がないんです。
Q.里山の木の活用方法としては何が考えられますか。
西山さん:幼木などは、学生と一緒に庭木として使ったりする試みを進めていますが、大径木(大きくなりすぎた木)の利用についてはあまりできていないのが現状です。
大径木の利用は、家具が一番わかりやすいかな。でも、いい材は、畑みたいに栽培してるところがほとんどだから、真っ直ぐな綺麗な材が出てくる。大量に切って大量に製材して、もう大量に買える。一方で、里山は使える木がポツポツ点在していて、非効率。しかも、切ってみないとどんな状態かわからない。50〜60年放置されてるから、付加価値がつきにくい。基本的には海外の木と同じ価格で出せるかなみたいなレベルだから、非効率で。
でも、家具の材として売る方向性もやっぱ必要なので、幼木や下草は庭などの植栽として、大径木は家具などに利用するといった取り組みを、木材コーディネーターや研究者、家具職人らと進めはじめました。

山採りされた木を用いて西山さんが植栽したカフェ。

里山を多様な形で活用するため、木材コーディネーターや家具職人、研究者、大学生らと里山に入り、調査や打ち合わせを行っている様子。
Q.伐採を行う時期は、明確に決まっているものなのですか。
西山さん:夏に切ると、水分量がすごく多いから、カビだらけになってしまうんです。だからその時期は基本切らない。そういうふうに、水分量の少ない時期を狙って行っています。

採る木を見定めている様子
Q.里山での活動を行うにあたって、フィールドの必要条件は何ですか。
西山さん: 1つが、山採りをして使える植物があるということ。もう一つが、山の所有者が判明していること。所有者と地元住民の協力があるってことも大事。あとは、車で近くまで行けるかってこと。そういう条件で探していたけどなかなか苦労しました。植物はたくさんあるけど車が入れない、人は協力的だけど使える植物が何もないとかいろいろあって。その条件がそろっていたから、広尾東を拠点に決めました。
Q.里山の経済価値についてどう考えているか?
西山さん:今の現代人にとって里山には経済的な価値が無いに等しいというのが現状だと思います。多面的機能という呼ばれ方をしているような、要するに保水、治水、生物多様性の保全などの機能はあるんですけど、それに経済的な価値がつきにくい。

鬱蒼とした木々。地表まで光が届きにくく、植物が育ちにくい。
Q.里山を手入れすることの意義をどのように考えていますか?
西山さん:ちゃんと山を触ることによるメリットは必ずあります。人が定期的に手入れしていたら、それなりに明るくなる。車で山を通ったらどよーんとして暗いでしょ? それがもっと明るい光が差し込むようになります。
熊とか鹿問題でも、彼らも見通しがよくてそこにいるのがバレるようなところを好んで歩きづらいです。そう言った意義はあるけど、そうなる可能性があるだけで思い切って手入れしようとするのは難しいですね。
Q.里山に植生する植物によっては、何も手を加えず見守るということもあるのですか?
西山さん:里山は人が使うために人が手を入れるものであり、何も手を加えない里山は里山ではないと考えています。何も整備しなくても常緑樹の森はできますが、それが人間に都合がいいものかと言われれば、違う。
Q.今後の里山についてどうお考えですか。
西山さん:今の里山は、これまで話したように、自治体も専門家も触れない宙ぶらりんな状態です。しかしながら、人が触らない限り、自然というのはその状態を維持できないんです。放置すると景観悪化、空き家、木まみれになるおそれがある。
だから、自転車のコースや散歩道を里山に作ったり遊びに入ったり、何かしら山に入る理由を作ることが重要なんですよ。適切な数の人が適切な場所に入り、山に触れること。里山の現状を知ったうえでこういう考えができれば、里山の再生利用の可能性は高くなると考えて活動しています。
インタビューを終えて
今回のインタビューを通して、里山の厳しい現状と未来への展望を学ぶことができました。予想とは違う返答に、準備していた質問ができない瞬間もありました。しかし、里山についての考え方はいろいろあり、方針を一つに定めることの難しさについても知ることができました。私たち学生が里山のためにできることはそんなに多くはないですが、関心を寄せたり、プロジェクトに参加したりという小さなことから里山に貢献していけたらいいなと思いました。(環境人間学部1回生、4名)
2026年1月 作成
本記事は1回生向け授業「環境人間学ゼミナール~農業・農村のリアルを学ぼう~(担当:柴崎)」の一環で作成した。

