マヌカ蜂蜜の成分に関する研究
マヌカ蜂蜜とは
神秘に包まれるマヌカ蜂蜜
マヌカ蜂蜜はマヌカの花(Leptospermum scoparium)に由来する蜂蜜であり、ニュージーランドでのみ得られます。ただし、マヌカの亜種がオーストラリアにも自生しており、ジェリーブッシュ蜂蜜として知られています。マヌカ蜂蜜のユニークな特徴として高い抗菌性があります。他にも機能性があるのではないかと考えられていますが、未だその機能性に関する研究は不充分です。比較的高価な蜂蜜ですが、生産量よりも販売量が多いなどの問題(食の偽装の可能性)が指摘されています。
これまでの経緯
新規配糖体Leptosperinの発見
なぜマヌカ蜂蜜の研究を始めるに至ったか?
ニュージーランドでの1年間の研究(留学)での滞在中、マヌカ蜂蜜を日常的に食べる機会がありました。普通の蜂蜜よりも苦みがあるのですが、それが逆においしさと感じられました。ニュージーランドでの研究は、どちらかと言えば、生化学や医学寄りの炎症性酵素とセロトニンに関する内容でした。食品の研究者でもあるため、マヌカ蜂蜜の機能性に関心を持ち、少し調べましたが、十分な学術研究がなされていないことがわかりました。本当に、言われている、期待されている機能性は本当だろうか? 日本に帰国した後、自分の研究室でマヌカ蜂蜜の研究を開始することにしました。ちょうど、ニュージーランドで炎症性酵素ミエロペルオキシダーゼに関する研究を行っていたこともあり、まずはその酵素阻害について検討を始めました。いくつか試した蜂蜜の中で、最も阻害活性が高かったのが、マヌカ蜂蜜。そこでさらに、マヌカ蜂蜜中に含まれる酵素阻害成分の探索を開始しました。結果として、2つの化合物が見出され、一つはMethyl syringate(豊富に含まれている既知物質)、もう一つは苦労の末、学外との共同研究の成果として、新規化合物Leptosperin(レプトスペリン)を同定しました。
レプトスペリンについて調べていくと、興味深い事実がわかりました。マヌカ蜂蜜(とジェリーブッシュ蜂蜜)にしか、見つからないのです。つまりは、レプトスペリンがあれば、マヌカ蜂蜜、といえることになります。蜂蜜の花蜜の純度を言うことは難しかったのですが、レプトスペリンを測定すれば、その純度が推察できるのではないか、と考えられました。
今後の研究の方向
認証評価への応用と、隠された機能性研究へ
今後、何を研究するのか?
レプトスペリンはマヌカ蜂蜜にユニーク(特徴的・特異的)な存在です。Unique Manuka Honey協会(UMF協会)と提携し、レプトスペリンを主要成分として、その他の成分も加え、ケミカルマーカーとしての認証評価系への採用がすでに始まっています。しかしながら未だ研究は十分ではなく、2016年にはニュージーランドでシンポジウムが開催され、ニュージーランドの養蜂家や研究者、また、オーストラリア、イギリス、ドイツ、日本の研究者も加わって、真のマーカーを、その利用方法を議論しています。まだまだ認証評価についても、課題が残されています。
一方、当初の目的であった、マヌカ蜂蜜が機能性を有するのか、また有るとすれば、どのような機能でなぜどのように発揮しているのか。その解明が出来ていません。新規配糖体がその一部を説明できる可能性があります。そこで、機能性の検討を進めると同時に、富山県立大学とも共同して、レプトスペリンの代謝研究を進めています。