脂質酸化

脂質の酸化とは

脂質酸化は連鎖します

脂質は酸化されやすい生体内の物質です。なぜ酸化されやすいかというと、連鎖反応により次々と脂質同士で酸化を進めて行ってしまうためです。さらに酸化された脂質が、二次的に、すなわち、また更に他の生体成分である核酸や蛋白質などに攻撃を仕掛けます。このため、脂質の酸化は重要となります。脂質の酸化物で修飾された物質が体内、組織、細胞などで見つかっており、脂質の酸化物そのものも血中や尿中から検出されています。

これまでの研究及び共同研究体制

名古屋大学等との共同

研究の進行状況

脂質酸化によりアルデヒドなどの物質が生じます。このアルデヒドにより蛋白質が修飾されます。また、我々のグループでは脂質ヒドロペルオキシドと蛋白質を混ぜるとアミド型の付加体が生じることを世界に先駆けて示してきました(1999年に第一報)。脂質ヒドロペルオキシドは脂質の酸化の初期段階に生じる物質ですので、より早期に体内の酸化ストレスの増加を検知できる可能性があります。またアミド型の付加体は安定に存在しますので、マーカーとして有用といえます。アミド型付加体にはヘキサノイルリジン、HELや、プロパノイルリジン、PRLなどが有ります。
 最近、HELがアルデヒドと過酸化水素から生じるという報告もなされていますが、我々の検討ではその生成量は脂質ヒドロペルオキシドに比べて低く、中間体が存在するとしても、何か他の物質ではないかと考えています。このように未解明の部分もあるアミド型付加体ですが、酸化ストレスのマーカーとしての利用は広まっています。すでに30報以上のアミド型付加体に関する学術論文が発表されています。

今後の研究の方向

その意味は:結果なのか、原因なのか?

今後、何を研究するのか?

HELはその構造からω6系脂肪酸に由来すると考えられるため、体内のリノール酸やアラキドン酸の酸化を示す物質と言えます。一方、PRLはω3に由来すると考えられ、EPA, DHA, αリノレン酸などの多価不飽和脂肪酸PUFAがその前駆体と考えられます。このように、HEL, PRLを測定すると、体内でどういう種類の脂肪酸が酸化されやすいのかを明らかにできることが期待できます。すでに、糖尿病患者ではPRL, HELが高い値を示すことが明らかになっており、体内の酸化ストレス増加を示唆しています。ただ、食事内容との比較検討はまだ行われていませんし、その他の疾病についてもまだ充分に研究されていません。EPA, DHAなどは機能性脂肪酸として着目されており、その摂取が望まれますが、抗酸化物質との併用により、より低濃度で、同等レベルあるいはそれ以上の機能性を発現できるかもしれません。これらEPA, DHAの酸化による損失分をPRLが示すことも期待しています。
 また、先ほども示していますが、HELなどを生み出す前駆体については、まだ充分な解明がなされていません。我々の最新の研究では酸素の封入により、脂質ヒドロペルオキシドからのHEL生成が促進されるという結果が得られており、何らかの酸化反応がそのステップに入ってくると考えています。但し、アルデヒドを測定しますと、HEL生成を説明出来ませんので、前駆体としてはアルデヒド経路はわずかと考えています。今後の更なる研究が必要です。