研究テーマ

加工食品のテクスチャーや高齢者や幼児の食環境の改善を目指して、食品ハイドロコロイドを用いて機能改善を図る食品プロセスの開発・研究に取り組んでいます。
食品ハイドロコロイドは、耳慣れない食品素材ですが、ゲル状食品、麺類、水産練り製品などの伝統的食品をはじめ、身近な食品に含まれています。
特に、寒天、ゼラチンが有名で、澱粉、蒟蒻(学会用語では、コンニャクグルコマンナン) も食品ハイドロコロイドです。そして、最近では、手軽さに留まらず、多様な食感や機能特性を目指して、カラギーナン、キサンタンガムのような食品多糖類をはじめ、新しい素材の開発と産業化が、多様な人間環境からの要請を受けて発展しています。
当研究室では、この食品ハイドロコロイドの持つゲル化性・増粘性などの機能特性を生かして、破断強度、融点、凝固点などの物性と、おいしさに代表される嗜好性、最近ではその中間に位置する咀嚼筋筋電図や脳波による解析も試みています。
それらを用いて、人間環境の改善に寄与する加工食品の開発を目指して、基礎研究と応用研究を進めています。

主要研究テーマ

1.食物繊維の付与、澱粉の老化抑制 2.酵素反応に及ぼす食物繊維の影響 3.高齢者用食品の物性と嗜好性の改善 4.新規素材の食品混合によるテクスチャーの改善 5.兵庫県産シカ肉の性状

主要研究アプローチ

1.基礎研究

食品、特に加工食品は身近な存在ですが、その要求機能は、手軽さから
・栄養補給機能
・健康維持機能
へ次第に多様化し、その用途は、
・咀嚼や嚥下が困難な高齢者向けの加工食品
・食物繊維補給食品
・動物脂肪代替食品
などに発展しています。

当研究室では、加工食品について
・流動特性
・破断特性、テクスチャー測定
・動的粘弾性
・示差走査熱量測定(DSC)
・筋電図
・脳波
などから、系統的に基礎研究を進めています。

2.おいしさの評価研究

食品プロセスでは食品を扱いますので、嗜好性(おいしさ)も大切です。人間環境面から、物性という客観評価だけでなく、嗜好性や飲み込みやすさなどの主観的評価が、車の車軸となる研究です。味、香り、色と並び、おいしさの決定要因の3割以上を占めると言われるテクスチャー(食感)と嗜好性の関係を実感できる官能評価実験は、味の識別に対する人間の感覚について再認識でき、多くの学生が興味を持って取り組んでいます。

3.食環境の調査研究

当研究室では、咀嚼・嚥下困難な高齢者の方々との共同研究などにも積極的に取り組んでいます。咀嚼・嚥下困難になってしまうと、食品の経口摂取が難しくなり、栄養摂取が減少し、かつ食べる喜びが奪われます。結果、高齢者の自立した生活の質(QOL: Quality Of Life)が大きく衰退します、おいしさや嗜好性という感覚機能、栄養補給機能、自立した生活の質(QOL)を高める健康維持機能において、食品プロセスは人間環境に大きな影響を及ぼしています。今後の社会において、高齢者の健康で自立した生活の質(QOL)を高め、高齢者の健康寿命を維持する食環境について、調査研究に取り組んでいます。