環境人間学部は、特色とする文理融合の学際的アプローチを生かしてSDGs達成に貢献ため、各教員がそれぞれの専門の観点から様々な研究・実践を行っています。また、SDGs推進室を設置し、学内外の多様な関係者と連携しながら、環境人間学部ならではの取り組みを展開しています。
環境人間学部SDGs推進室
高橋綾子、井関崇博、増原直樹、中出麻衣子、西村洋平、小川風帆
Sustainability ~複眼的視点で持続可能性を追求する
環境と経済のジレンマをいかに克服するか。…中嶌 一憲
再生可能エネルギーと地域環境を両立させるには。…増原 直樹
人口減少社会における学校と地域の持続可能性を追求。…尾﨑 公子
持続可能で皆が幸せになれる食生活を目指して。…坂本 薫
わかちあう経済をみんなで学び合い、探求する。…杉山 武志
自然と共生する建築のあり方を問う。…水上 優
災害が起こる前までに人々や社会をいかに強くするか。…木村 玲欧
国家と国民の関係を歴史的に考察し、社会発展のあり方を考える。…鄭 成
Inclusion ~誰一人取り残さない豊かな社会へ
気候変動による地域気象の変化を把握し、備える。
地球温暖化により変わりつつある地域の気象・気候。これまでなかった現象が当たり前のように起こる、持続可能な社会の実現には気候変動に適応することが求められています。台風、大雨、猛暑など様々な時空間スケールの現象を数値シミュレーションを用いて再現、予測、解析し、気候変動による地域の気象・気候への影響を私たちの暮らしの目線から調べています。
more環境と経済のジレンマをいかに克服するか。
日本において気候変動に伴う自然災害の激甚化が懸念されていますが、このような気候変動リスクに対して、社会がどのように対応すべきかを検討するために、気候変動による経済的なリスクを見積もる必要があります。そのために、環境保全と経済成長を両立するための政策の在り方やその評価、環境の経済的価値の評価について研究を行っています。
more再生可能エネルギーと地域環境の保全、両立させるには。
SDGsの特徴の一つであるゴール間のシナジーやトレードオフの解明をめざし、水、エネルギー、気候変動を題材にゴール間のつながりを把握し、どのような状況でトレードオフが起きるかを研究しています。逆に、環境と経済、環境と社会といった課題解決を両立するシナジー(相乗効果)を生む政策を兵庫、京都等のフィールドで提案しています。
more人口減少社会における学校と地域の持続可能性を追求
急激な人口減少の下、学校の小規模化が問題になっています。学校は子どもたちの教育施設であると同時にコミュニティの核としての機能を持っています。小規模化する学校の存否は、子どもの教育保障とともに地域の将来にも関わります。学校を地域のインフラとしてどのように機能させて、地域の公益を実現させていくのか。私は、持続可能な社会構築を担う学校モデルを探求しています。
more持続可能で皆が幸せになれる食生活をめざして
実習において、SDGsの観点を取り入れた給食を学生自ら計画し、作り、提供することにより、SDGsに対する実践力を身に着けられるようにしています。研究では、高齢者向け炊飯器の開発や食品ロスを削減する食材活用法、環境に配慮した新規食品の開発などを、おいしさや食べやすさ、栄養や機能性の観点から行っています。在来種野菜に関する活動や郷土料理の調査研究も行い、持続可能な食文化の構築をめざしています。
moreわかちあう経済をみんなで学びあい探究する。
人文地理学を基盤に、地域コミュニティ研究と地域コミュニティを支える都市・地域政策を研究しています。なかでも私たちの身近な暮らしに関わるローカルなコミュニティ経済を次世代につないでいくために、生業を営む人たちが地域の未来を互いに学びあい、共生と連帯の精神を育みあえる環境をどのように創造する必要があるのか探究しています。
more自然と共生する建築のあり方を問う
建築は人間を包み、その建築は自然に包まれています。建築は自然環境と人間活動との関係の表現に他なりません。有機的建築によって自然と人間が響き合うことを目指した建築家フランク・ロイド・ライトの思想と作品を研究しています。既に世界遺産に登録された8件のライト建築にさらなる追加登録を進める活動はじめ、建築作品の保存・活用に関する研究も行っています。
more災害が起こる前までに人々や社会をいかに強くするか。
災害・防災について、心理学・行動科学の立場から研究しています。日常とは異なる災害時の心理・行動の特徴を明らかにしたり、歴史災害を掘り起こして小中学校の防災教育教材を作ったり、住民や企業の人たちとワークショップを行って地域防災力・組織対応力を向上させたりと、「現場」を大切にしたアクション・リサーチ研究を行っています。
more国家と国民の関係を歴史的に考察し、社会発展のあり方を考える
1950年代の中国において、国民の考え方がどのように国家の宣伝によってまとめられたかを研究しています。当時、中国は平等な社会を掲げて国作りを始動しました。強力な政治宣伝下、一体感を覚えた国民は国作りに情熱的に取り組みました。しかし、国家と国民のゆがんだ関係は結局、深刻な人的災難を招きました。60年前のことですが、いつか再来するとは限りません。間違ったことも含めて、人間が歩んできた道を知ることが大事です。
more不利な立場にある子どもたちのために。
貧困、マイノリティ、開発途上国など、不利な立場にある子どもたちが平等な教育機会を享受するにはどうすればいいか研究しています。ゼミ生と一緒に姫路や神戸に住む外国人の子どもたちの学習を支援したり、ラオスに学校を建設する活動をしたりして、子どもたちが質の高い教育を受けることにつながる実践を続けています。
more個人の尊厳を基軸に性・家族のあり方を見つめ直す。
家族法という法領域を専門に研究しています。家庭という居場所は、親密圏として個人を包み育むゆりかごとなる場合もあれば、その閉鎖性や内在する力関係から自己犠牲を強いる檻となる場合もあります。現行憲法24条の謳う「個人の尊厳」の実現にむけて、社会的に弱い立場にある人々の権利保障や家族の実態に即した法的支援を行っていくための理論的枠組みについて検討しています。
more真のインクルージョンとは?寛容について考える。
寛容とはただ我慢することではありません。差別感情を持つ人がヘイトスピーチを控えても寛容とは言えないでしょう。また「外国人大好き」のように何でも喜んで受け入れることや、「どうでもいい」といった無関心とも異なります。寛容とは、相手の考え・生き方を受け入れられないと思いながら、それを多様な価値基準から評価し尊重することです。真のインクルージョン実現にとって鍵となる寛容について考えています。
人間を排除する現代の社会構造を根本から問う。
福祉課題を掘り下げながら、日本社会の「生きづらさ」について研究しています。社会的に排除される人々を生み出すプロセスや社会構造を解き明かすことで、より多様でインクルーシブな日本社会に変化していくヒントが見えてきます。ケアや支援の豊かな世界を探る中で、生産性至上主義の日本社会の歪みを捉え、より幸福な社会とは何かを探求しています。
moreマイノリティ文学を通して公正の意識を養う。
アメリカ文学を研究しています。なかでもアメリカ国内の複雑な差別構造に注目し、アメリカ黒人作家たちが黒人コミュニティ内部の階級・ジェンダーの問題とどのように向き合ってきたのかを研究しています。マイノリティ作家の作品研究は、アメリカに留まらない幅広い文脈において、現代社会のあり方についての示唆を含んでいます。
more災害に直面した人々が詠う詩から何を学ぶべきか。
21世紀を生きる私たちは、人間活動の結果生み出された地球規模の気候変動と環境汚染に直面しています。私の専門であるアメリカ文学及び環境文学も、地球規模の環境汚染に対して、危機意識と終末感を顕す文学的言説を通し、環境正義に基づき、その深刻さを読者に伝えています。私は日本の災害文学を環境文学の中で捉えなおし世界に伝える教育研究活動をしています。
more途上国での食育は現地の人と一緒につくっていく。
健康につながる食環境づくりや食育について、栄養学、行動科学の観点から研究しています。日本には、食育を担う栄養教諭制度と、世界でトップクラスの質を誇る学校給食がありますが、給食の開始は戦後の子どもの低栄養改善に遡るものでした。今も栄養面で多くの問題を抱える発展途上国で、現地調査や関係者との協働作業から栄養改善につながる食育や学校給食のあり方を提案し、現地での食の授業も行っています。
more低栄養の方に安全な栄養療法を
日本には高齢者や病気による低栄養の方が多く、健康問題の一つです。低栄養を改善するために十分量の栄養を摂取すると、リフィーディングシンドロームが起こることがあります。リフィーディングシンドロームは意識障害や心不全になるため発症予防が重要です。しかし、発症メカニズムなど詳細は不明です。そこでメカニズムの解明、予防・治療法の研究を行い、安全な栄養療法の開発を目指しています。
若い世代にこそ健康的な環境と食習慣を。
若年成人は未来を担う重要な世代であるにも関わらず、食習慣の乱れが危惧されており、対策も十分ではありません。そこで若年成人を対象とし、健康的な食事や食習慣(例えば朝食摂取、十分な野菜摂取、バランスの良い食事など)の関連要因の研究や、健康的な食事を可能にする食環境整備の研究、心理に着目した行動変容の研究などを行っています。
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